ブラジル、6度目の優勝なるか? 識者の予想するW杯決勝Tの展望

構成:スポーツナビ

いよいよ決勝Tがはじまるが、優勝国はどこになるのか。識者4人に予想してもらった 【写真:ロイター/アフロ】

 ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会はグループリーグの全日程が終了。日本時間29日からは決勝トーナメントのラウンド16が行われる。日本はグループリーグ敗退となったものの、対戦カードもすべて決まり、サッカーファンの興味は尽きないところだろう。

 今回スポーツナビでは、現地ブラジルでW杯を取材している4人の識者にご登場いただき、ベスト4に残るであろう4カ国、そして1〜4位の順位を予想してもらった。4人ともに共通するのは、南米の2強であるブラジルとアルゼンチンはベスト4に残ると踏んでいること。そして、グループリーグの戦いから、オランダの優勝やフランスの躍進を推す意見が出ていることだ。ここからはノックアウト方式となるだけに、前回大会で優勝したスペインのグループリーグ敗退のような、さらなる番狂わせも期待される。果たして決勝の地マラカナンで優勝トロフィーを掲げるのはどの国になるのだろうか。

 なお、せん越ながら編集部のサッカー担当もこの予想に加えさせてもらった。

宇都宮徹壱(写真家・ノンフィクションライター)

宇都宮氏の予想は、円熟期に達しつつあるメッシ擁するアルゼンチン。 【写真:ロイター/アフロ】

「ネイマール対メッシで語り継がれる決勝になる」

 16強のうち、南北アメリカ大陸のチームが半分の8チーム。逆にヨーロッパ勢は、出場13チームのうち半分以上の7チームがグループリーグ敗退の憂き目となった。「南米で行われる大会は南米が強い」というのは、過去のW杯の歴史を見れば明らかだが、今大会では特に北中米カリブのチームの躍進が際立っている。なかでも期待できそうなのが、メキシコ。5バックに速やかに可変する3バックシステムは、守備面ではブラジルの猛攻を封じ、攻撃面ではクロアチア相手に3ゴールを挙げた。これまで自国開催でのベスト8が最高位だったメキシコが、いよいよベスト4に食い込むと予想する。

 ヨーロッパ勢はどうか。これまでの実績を考えればドイツだろう。だがどうしても、その隣の山にいる若くて無欲なれど勢いのあるフランスが気になる。フランク・リベリの離脱により、かえってチームが結束し、新しい世代の選手たちが伸びやかにプレーしている姿が、前回の10年南アフリカ大会のドイツと重なって見えるのだ。この勢いをもってすれば、ドイツを倒して2大会ぶりの準決勝進出を果たす可能性も十分に考えられる。

 決勝の舞台マラカナンのピッチに降り立つのは、ホスト国のブラジルと対抗馬のアルゼンチンであろう。南米同士の決勝戦は、1930年の第1回W杯ウルグアイ大会以来のこと(50年大会はリーグ戦で優勝チームが決まったため、決勝戦はなかった)。どちらもグループリーグでは、決して圧倒的な強さを見せたわけではなかったが、ピークを準決勝以降に考えているのであれば当然のこと。バルセロナの僚友であるネイマールとリオネル・メッシが、それぞれの祖国の誇りと意地を懸けてマラカナンで相対する。きっと末永く語り継がれるW杯ファイナルとなるはずだ。

 肝心の順位は、優勝アルゼンチン、準優勝ブラジル、3位フランス、4位メキシコと予想。この順位付けに特段の理由はない。アルゼンチンの最後の優勝が86年メキシコ大会であったことを思えば「そろそろ」だろうし、逆に円熟期に達しつつあるメッシを擁しても優勝できなければ、アルゼンチンの次のチャンスは当分先になりそうな気がする。3位決定戦に回ったメキシコは、この段階で満足してしまい、ころっとフランスに負けそうな予感。それでも決勝進出の2チーム、そして3位決定戦に回る2チームに、さほどの力の差はないと考える。

【宇都宮氏の順位予想】

1位:アルゼンチン
2位:ブラジル
3位:フランス
4位:メキシコ

元川悦子(サッカーライター)

圧倒的な応援を味方につけるブラジル。ネイマールという取るべき人がキッチリ結果を出しているのが心強い 【写真:ロイター/アフロ】

「圧倒的な応援を味方につけるブラジルが優勝」

 1次リーグは勝ち点7で順当に1位通過したホスト国・ブラジル。初戦・クロアチア戦では開幕戦特有の雰囲気と国民の絶大な期待が重圧なったのか、先制を許す苦しい展開を強いられた。しかし、エース・ネイマールがここ一番でミドル弾とPKを決め、アッサリと試合をひっくり返した。その後も2戦目はメキシコの堅守に苦しんだものの、カメルーン戦ではまたもネイマールが爆発。取るべき人がキッチリ結果を出しているのが心強い。

 ラウンド16以降はチリ、次はコロンビアとウルグアイの勝者と南米勢との戦いが続く。手の内を知り尽くしている同士だけに難しいだろうが、1次リーグでやや不安を垣間見せた守備陣が崩れず、攻撃陣が確実にゴールを奪えば勝てるはず。9日(日本時間、以下同)の準決勝はドイツとの事実上の決勝戦になりそうだが、国民の力強い後押しが大きな力になるだろう。

 ブラジルの決勝進出を阻みたいドイツは、非常に完成度の高いサッカーを見せていてスキがない。ただし、サルバドール、フォルタレーザ、レシフェという高温多湿な地域で1次リーグを戦った。決勝トーナメントでも、アルジェリアとのラウンド16はウルグアイ国境の涼しいポルトアレグレに飛び、リオデジャネイロを経て、ベロオリゾンテへ移動する厳しい条件を強いられる。タフなドイツの選手たちもさすがに疲労がたまってくるはず。ブラジルは地の利がある上、移動距離もフォルタレーザ以外はサンパウロ近郊で戦っていて、環境的に有利だ。

 ロビン・ファン・ペルシら攻撃陣が好調なオランダは、ラウンド16のメキシコ戦でかなり苦戦するだろうが、そこを抜ければ順当に4強入りすると見られる。アルゼンチンもラウンド16以降はスイス、ベルギーと米国の勝者ということで、ここまでリオネル・メッシの4ゴールとチーム全体のバランスのよさを考えると、取りこぼしはなさそうだ。

 9日にサンパウロで行われる準決勝は大会屈指の好カード。そこで両者の明暗を分けるのは、やはり環境面ではないか。アルゼンチンはここまでリオデジャネイロ、ベロオリゾンテ、サルバドール、サンパウロ、ブラジリアと気候差の少ない近場を行き来しているだけで極めて恵まれている。疲労度という意味では絶対に彼らが有利。最終的にはアルゼンチンが勝ち上がるだろう。

 3位決定戦は1日試合間隔が長く、選手層も厚いドイツが順当に勝つ可能性が高い。そして13日のマラカナンでのファイナルは、圧倒的な応援を味方につけるブラジルが勝って、64年前の悲劇を払拭してくれると期待する。2002年日韓大会でチームを世界一に押し上げた名将・ルイス・フェリペ・スコラーリ監督の手腕に期待したい。

【元川氏の順位予想】

1位:ブラジル
2位:アルゼンチン
3位:ドイツ
4位:オランダ

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