敵将として対峙するレーブとクリンスマン 今も続く2人の友情、真剣勝負の結末は?
現在のドイツ代表にも強く残るクリンスマンの色
2006年のW杯ドイツ大会は監督とアシスタントコーチだったクリンスマン(左)とレーブ(右)。ブラジル大会ではドイツと米国の代表監督として対峙することになった 【Bongarts/Getty Images】
クリンスマンがかつて2004年〜06年まで率いたドイツ代表は、今もかつての指揮官の色が強く残っている。その古巣は、彼の言葉をすべて聞き入れたものだ。そうして、かつての教え子たちは2006年夏、ドイツでのワールドカップ(W杯)でおとぎ話の主役となった。
クリンスマンがつくり出したものは、確かにあった。ドイツの熱狂的なファンである彼は、ユーロ(欧州選手権)2004での早すぎる敗退(グループリーグ敗退)後、飢えを覚えていた。だから、ドイツ代表をひっくり返した。高みを見据える指揮官は選手たちをシャッフルするだけではなく、代表チームのスタッフも入れ替えたのだ。フィジカルコーチにテクニカルコーチ、フィットネスコーチにフードアドバイザー……。ただし、その船にはスポーツディレクターとしてオリバー・ビアホフと、アシスタントコーチのヨアヒム・レーブ(現ドイツ代表監督)の席を用意することを忘れなかった。すべては、母国でのW杯で世界王者になるために。
「サッカーを超越した」真の友情を築く
現在49歳になったクリンスマンは「ヨギ(レーブの愛称)は本当の友人だし、単なるアシスタントコーチなどではなかった」と、思い出をよみがえらせる。2人は互いを非常に高く称賛し合ってきた。2年前には、「誰かに弱点があれば、他の誰かにはそれを補う強みがあるものさ」と、ドイツ紙『ベルリナー・ツァイトゥング』で語っている。レーブはとにかく「素晴らしいヤツで素敵な人物」であり、恋しくなることさえあるという。
2人は何時間でも一緒にいて、話し続けることができるだろう。「そういう状況になったら、僕らにテレビゲームなんて必要ないね」。この男たちの間には、スポーツ界ではあまりみられない真の友情が存在しており、それは「サッカーを超越したもの」であると『ヴェルト』で説いている。今日に至るまで、2人の指揮官は密に連絡を取っており、電話をすることもよくあるそうだが、読者には2人が住むドイツのフライブルクと米国のカリフォルニアの距離を忘れないでいただきたい。
太陽の似合う米国代表監督クリンスマンは革新的な人物で、モチベーションを上げる天才。物事を変化させていくことを好む。現ドイツ代表の指揮官レーブは、より根気強く仕事をする男で、戦術的な才にあふれ、現実的で着実な仕事に信を置く。だからこそ、この2人はうまが合ったのだ。