奈良、身長差30cmのビーナスに善戦=ウィンブルドンテニス
奈良、“パワーの象徴”にも果敢に攻める
30センチの身長差をものともせず、奈良くるみは攻撃的なプレーを見せた 【Getty Images】
現在、奈良は日本の女子で最高の世界ランキング41位。ビーナス・ウィリアムズ(米国)との初対戦には課題があった。奈良の身長はツアーで最も低い155センチ。ビーナスは身長185センチと30センチも違う。奈良は1月のASBクラシックで184センチのアナ・イバノビッチ(セルビア)、3月のソニー・オープンでは188センチのマリア・シャラポワ(ロシア)と対戦し、いずれもストレートで敗れている。だが、大型選手のボールの反射角とリーチの広さの克服は、これから世界ランキング30位台、20位台と定着を狙っていくためのテーマ。パワーの象徴として君臨したビーナスと、芝の速いサーフェスでどう戦うかが注目された。
奈良の持ち味は、フルセットを戦える脚力とショットの精度の高さ。晴れ渡った広いショーコートは気分的に戦いやすかっただろう、いい形でゲームに入った。奈良は最初のサービスゲームで2本のブレークポイントをかわすと、第2ゲームにフォアのパッシングショット、バックハンドのダウンザラインを決めて早々にブレーク。第3ゲームもあっさりとキープして3−0でスタートした。
奈良は、トップ100位内に入ったのが昨年の全米オープン後で、そこからじわじわとランキングを上げ、今年の5月には50位を切った。
「トップ選手の違いは、どんな時でも自分のテニスを貫き通すところ。その点で、目標にした“いつものプレー”はできたと思う」
この時点で、ビーナスにはまだ余裕があった。第4ゲーム、サービスエース2本をたたいてラブゲームでキープすると、第5ゲームは打ち合いからこじ開けたスペースにウイナーを放り込んでブレークバックした。
5ゲーム連取で一気に5−3に持ち込まれた奈良だが、ここからが攻撃的だった。ラブゲームでキープした4−5からの第10ゲーム、30−30から鮮やかなバックハンドのリターンエースで追いつき、さらに第12ゲームの相手のサービスゲームでは、15−40からデュースに持ち込んでビーナスにプレッシャーをかけた。しかし、タイブレークはミニブレークで先行しながら、4−1から一気に6ポイントを奪われて逆転された。
第2セットも落としてストレート負けとなった奈良だが、この試合で手応えを得たようだ。
「子供の頃から見てきた選手とこうした舞台でプレーできたのはうれしかったし、自分の力を70〜80パーセント出せたことには満足しています」
過去3回のグランドスラムでエレナ・ヤンコビッチ(セルビア)と対戦し、善戦して存在感をアピールした。
土居、ストレート負けも「テニスが楽しい」
エカテリーナ・マカロワ(ロシア)は1回戦でクルム伊達公子(エステティックTBC)を接戦で倒した、パワーもテクニックもあるサウスポー。土居は2−5とリードされたところからフォアハンドを軸に攻勢に転じて5−5に追い上げた。だが、第12ゲームを再びブレークされてこのセットを落とした。第2セットも随所に土居らしい小気味のいいウイナーを見せたものの、ストレートで敗れた。
「試合の内容が良くなってテニスが楽しい。相手にプレッシャーをかけ続けることができるかどうか。それが結局、大事なポイントにつながると思う」(土居)
グランドスラムの大舞台が日常のプレーの延長線上にあることを、土居はあらためて思い知らされた。
男子は第1シードのノバック・ジョコビッチ(セルビア)、第3シードのアンディ・マレー(イギリス)、第11シードのグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)らが勝った。一方、第7シードのダビド・フェレール(スペイン)はアンドレイ・クツネソフ(ロシア)に、第12シードのエルネスツ・ガルビス(ラトビア)がセルギ・スタコフスキ(ウクライナ)にそれぞれ敗れた。
女子は第2シードのナ・リ(中国)、第4シードのアグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)、左肩故障から復帰したベラ・ズボナレワ(ロシア)らが勝ち進み、第8シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)は敗れた。
なお、7年ぶりのウィンブルドン出場だったマルチナ・ヒンギス(スイス)はズボナレワと組んだダブルスで惜しくも敗退。その女子ダブルスでは、クルム伊達のペア、青山修子(近藤乳業)のペアがそれぞれ勝ち進むも、奈良のペアは敗れた。
(文:武田薫)
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