錦織圭、我慢と平常心で初戦突破=ウィンブルドンテニス
初戦を勝利した錦織だが、単調な展開にし最後には「本当につまらない試合だな」と本音も 【写真:AP/アフロ】
錦織、クレーシーズンに得た自信を生かす
デ・シャプールのサーブは確かに強烈。左利き特有の逃げるスピンサーブこそないが、時速200キロ台の角度のあるフラットサーブを矢継ぎ早にたたき、ファーストサーブより速いセカンドサーブを放って威圧してきた。
それでも錦織がサービスゲームに集中しながら冷静に対応できたのは、全仏オープンの1回戦敗退後の切り替えに成功したからだろう。パリからすぐドイツに移動し、芝コートの前哨戦が行われるハレで練習を再開。大会は準決勝まで勝ち進んで、ロジャー・フェデラー(スイス)に敗れはしたが、芝コートへの自信を深めた。錦織はこう語る。
「春のクレーコート・シーズンで得た自信が、芝でも生かせたのが大きいですね」
第1セットの第3ゲーム、デ・シャプールのサービスゲームでわずかなチャンスが転がってきた。フットフォルト絡みの15−40からダブルフォルト。この虎の子の1ブレークを守って先手を奪ったことで、錦織の戦術が整った。サービスゲームだけに集中し、第2セット以降、ファーストサーブの確率は72%、78%と上昇。自分のサービスゲームでラブゲームが5あり、0−30も一度あっただけで、ブレークポイントは1本も与えなかった。
そんな中、別の“問題”が持ち上がった。
錦織のテニスの魅力はラリーの展開の妙にある。作り上げていく楽しみなのだが、サーブ力が支配する芝のサーフェスではそうしたテニスにはなり難い。
「芝でももっと打ち合いになることはあります。今日は、やりながら『本当につまらない試合だな』と思っていました」
デ・シャプールの強力なサーブを前に、リターンからチャンスを作る展開がなく、その単調さに自分でも嫌気が差していたというあたりが、錦織らしい。そこが我慢のしどころだ。もし錦織が平常心を失っていたら、相手の単調なパワーテニスに飲み込まれてしまっていただろう。
第2セットのタイブレークでは先にミニブレークを許しながら、相手に2度目のフットフォルトからのダブルフォルトが出て助けられている。デ・シャプールがネットダッシュを急いでしまったのも、錦織のリターンへの意識の強さから。そうした小さなところにも、この日の勝因が潜んでいた。
苦労人の杉田、惜敗するも手にした自信
「相手が芝で好調と言っても、2週続けて決勝を戦っていれば、かなり疲れがあるはずなので、アグレッシブに長い試合を目指しました」
本来の鋭さに欠けるロペスのショットをつなげ、スペースを読みながらウイナーを放つという、いかにも苦労人らしいプレーの長期戦はほぼ成功だ。第2セットに互いにサービスブレークを1度ずつしただけ、3セットともタイブレークにもつれ込んだが、ロペスがここ一番でベテランの老練さを発揮して6(6)−7(8)、6(6)−7(8)、6(7)−7(9)で奪った。
「グランドスラム挑戦が年齢的に早かったので時間がかかった。まだ若いので、最初の一歩として自信になるゲームができました」
伊藤と同学年のライバル。杉田のこれからに期待したい。
男子ではラファエル・ナダル(スペイン)、フェデラー、スタン・ワウリンカ(スイス)、マイロス・ラオニッチ(カナダ)らが順当勝ち。女子はセリーナ・ウィリアムズ(米国)、アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)、シモーナ・ハレップ(ルーマニア)、マリア・シャラポワ(ロシア)ら上位勢が勝ち上がっている。
(文:武田薫)
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