「結果重視」のカペッロ采配への疑念 ロシア国内でささやかれるFWの不足
「イタリア化」が進むロシア代表
ロシア代表監督となり2年が過ぎたカペッロ監督。それまでのオランダ路線から「イタリア化」を進めた 【写真:ロイター/アフロ】
それまでフース・ヒディンクからディック・アドフォカートへと継承されてきたオランダ人監督時代のロシアは、細かいショートパスを中心に中盤から攻撃を組み立てるスタイルであった。だが、下馬評も高く上位進出が期待されていた12年のユーロ(欧州選手権)では、守備陣のイージーミスにより失点を喫し、まさかのグループステージ敗退。この惨状を目の当たりにしたロシアサッカー連盟は方針転換を決断した。
「退屈なサッカー」の予感は徐々に現実のものとなっていった。カペッロが選手たちに要求したのは一にも二にも「規律」。チームはカテナチオを信条とした伝統的な「イタリア化」の道を歩んでいく。
結果重視でカリスマ指揮官の信頼は確固たるものに
要するに、「守備に走らない選手は使わない」という訳である。基本布陣は以前通りの4−3−3だが、両翼の選手はより自陣へ引いて守備に参加し、ボール奪取後は人数をかけずに得点を狙う効率重視の戦術を採用。ファンタジスタを排除し流麗なパスワークを捨てたことを惜しむ声は少なくなかった。
だが、カペッロは結果で周囲を黙らせる。14年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の予選では初戦から4連勝を飾り、同組の本命と目されていたポルトガルに勝ち点4差をつけて首位に立つと、このアドバンテージを計算しながら格下相手に確実に勝利し、首位で本大会通過を決めた。
スペインやイングランドではその厳格さから周囲と衝突したイタリア人指揮官であったが、彼にとってロシアという国との出会いは幸運であった。軍事国家としての性格をいまだ色濃く残し、ソ連時代から伝統的に「鬼軍曹」のような監督によるスパルタ式の指導に慣れてきたロシア人選手たちは規律を重んじるカペッロ式のやり方もすんなりと受け入れ、結果が出たことによってカリスマ指揮官への信頼は確固たるものとなった。権威やブランドに弱いというのもロシア人の特性であり、彼の実績が仕事をやりやすくした面もあるだろう。
「食事は全員がそろうのを待ち、自由な外出も厳禁、ミーティング時の服装さえ決められている。だが、勝つためにわれわれはこうした厳しいルールが必要なんだ。このような集団性は、そのままピッチ上に反映される」
MFグルシャコフのこうした発言は、メンバー全員の共通理解である。元主将のロマン・シロコフ(今大会は直前のけがにより離脱)は「美しいサッカーをして負けるよりも、つまらないサッカーでも結果を出す方が良いだろう?」と批判を一蹴した。