異なる母国を選んだボアテング兄弟の再戦 ともにピッチに立つことはできるのか?

兄弟をとりまくムードは別物

異なる代表を選んだボアテング兄弟。4年前に引き続き、W杯の舞台で対戦する 【Bongarts/Getty Images】

 すでに2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のグループステージで、顔を合わせているドイツとガーナ。グループDの行方を決める試合で、ヨアヒム・レーブ率いるドイツはメスト・エジルの得点で均衡を破った(1−0)。敵同士としてピッチに入ったドイツ代表のDFジェローム・ボアテングとガーナ代表のMFケビン=プリンス・ボアテングだったが、この兄弟はともに勝者としてヨハネスブルグのサッカーシティ・スタジアムを後にした。「ディー・マンシャフト(ドイツの愛称)」と「ブラック・スターズ(ガーナの愛称)」は、双方とも決勝トーナメントに進出したのだ。あれからちょうど4年が経ち、ガーナとドイツは再びW杯ブラジル大会の舞台で相見えようとしているが、その一戦への予兆は前回とは違うものとなっている。

逆風の吹くガーナ代表の兄プリンス

ガーナ代表の兄、ケビン=プリンス・ボアテング。W杯初戦の米国戦では先発メンバーを外れたが、ドイツ戦は出場なるか 【写真:ロイター/アフロ】

 今週16日(現地時間、以下同)、あらゆる人たちにとって驚きだったのは、ガーナの先発メンバーにケビン=プリンス・ボアテングの名前がなかったことだ。ジェイムズ・クウェシ・アッピアー監督は、シャルケ04のスター選手を約1時間もベンチでくすぶらせたのだ。プリンスにとっても、これは予期せぬことだった。「そうだね、最初から出場しなかったことには驚いたよ。監督には僕とは違うアイデアがあったようだね」。よく言えば、外交的で、おおっぴら。率直に言えば、反抗的で、ご立腹。ユルゲン・クリンスマン監督率いる米国に1−2で敗れた後、口を開いたベルリン生まれのMFの態度は謙そんとは程遠いものだった。

 ケビン=プリンスがブラックスターズの14年W杯のスタートを「オフサイド」の位置から見るというのは、南アフリカ大会への準備期間で目にしたのとまったく同じ光景だった。0−2で敗れたオランダとの親善試合に向かうバスの中、ガーナの選手たちは声をそろえて歌い、ダンスしていた。だが一人だけ、バスの後部座席で様子の違う男がいた。ヘッドフォンから流れるラップで自身を隔離した、ケビン=プリンス・ボアテングだった。

 10年6月のデビュー以降、プリンスは12回しか代表のユニホームに袖を通していなかった。代表チームに合流するためのフライトをキャンセルすることもしばしばで、それは壊れやすい彼のヒザをプレッシャーから守ることも意味していた。プリンスには「いいとこ取り」のイメージがついており、彼を人気者の座から遠ざけていた。

 プリンスがドイツ戦で先発メンバーに名を連ねるかは、まだ分からない。アッピアー監督は米国戦では4−4−2のフォーメーションを選択し、ボアテングのみならずマイケル・エッシェンというもう一人のスター選手も犠牲を強いられることとなった。「ケビンとマイケルは良い選手だ。だが、今日私が選んだのは4−4−2だ。ジョーダン・アイェウとアサモア・ジャンは、練習ではよく波長が合っていた」というのが、指揮官の見解だった。ただし、米国戦ではこの戦術は機能しなかった。

 21日にフォルタレーザで行われるドイツ戦は、ガーナにとっては決勝のような意味合いを持つ。「決勝トーナメントに進むために、2勝が必要な状況になっている。厳しいね」。FIFA(国際サッカー連盟)ランク4位(14年6月5日発表)のポルトガル相手に4−0というドイツ代表の今大会のお披露目公演を、欠席することなく見守ったアッピアーは、タスクの重さを心得ている。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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