若手の台頭が著しいスイスの育成事情 “名伯楽”が示す決勝Tへの確かな道筋
人心掌握術に長けたヒッツフェルト監督
手綱を握るヒッツフェルト監督(左)の存在も見逃せない。人心掌握術に長け、スイスをバランスの良いチームに仕上げた 【写真:ロイター/アフロ】
大会初戦となったエクアドル戦では、苦しみながらもアディショナルタイムに劇的な逆転ゴールを挙げて2−1で勝利。2得点とも交代出場のメーメディとハリス・セフェロビッチが決めたことで、メディアは「ヒッツフェルトの采配がチームを救った」と喜んだ。しかし彼の本当のすごさは人心掌握術にある。前半、あれだけ動きが重かったチームが後半にまるで違うサッカーを展開したのは、ハーフタイムにヒッツフェルトが「これがW杯だ」ということを再認識させ、無意識にかかっていたハンドブレーキを外させたからだ。そして解き放たれた選手はピッチ上で躍動し、見事に試合をひっくり返した。元ドイツ代表メーメット・ショルは「ヒッツフェルトは何が良くて何が悪かったかを専門的にとつとつと語り、選手にはそれが頭にスッと入ってくるんだ」とかつての恩師を絶賛していた。
決勝トーナメント進出のチャンスは十分
後半も勇敢に立ち向かったが、フランスを前に完全に力負け(2−5)。若手が台頭してきているとはいえ、ビッククラブの主力を張れるだけの選手はまだいない。組織として戦わなければ強国には粉砕されてしまう。それでも最後まであきらめずに攻め続け、見事なファインゴールで2点を返したのは次戦につながる大きな成果だろう。3戦目でホンジュラスに勝てば自力で決勝トーナメント出場を決められる。そしてそのチャンスは十分にある。
日本はサッカー強国であるスペインやドイツ、オランダやフランスといった国々から学ぼうとしている。伝統国から学べるものはもちろん非常に多く、価値のあるものばかりだ。しかし同時に、あるいはそれ以上に必要なのは、そうした強国と常に戦い続けながら懸命に対抗策を練っている、こうしたスイスのような国から学ぶことではないだろうか。