全米OP王者はサッカー大国ドイツ生まれ=カイマーの紆余曲折が凝縮された4日間

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初日から単独首位のまま別次元のゴルフで独走V

2014年全米オープン優勝を決めた瞬間、天を仰いだカイマー。2位に8打差をつける圧倒的なパフォーマンスで、10年の全米プロ以来2度目のメジャー制覇を飾った 【Getty Images】

 ボールが消えるより早く、パターはその手から離れ、10本の指先はゆっくりと空を向いた。目を細め、恍惚の表情で口元が緩ませる。雄叫びも、派手なアクションもない。掴んだものの大きさを実感するかのような神々しいフィナーレだった。

 米国ノースカロライナ州のパインハーストNo.2で行われた「全米オープン」最終日。29歳のマーティン・カイマーが後続に8打差をつける別次元のゴルフを展開し、ドイツ勢初の大会勝利、2010年「全米プロゴルフ選手権」以来となるメジャータイトル奪取に成功した。初日から単独首位の座を一度も許さない完全優勝は史上8度目(9人目)。欧州出身選手のうち、20代でメジャーを複数回制したのはベルンハルト・ランガ―、トニー・ジャクリン、そしてロリー・マキロイに続く4人目の選手となった。

10年度の全米プロ制覇から今年は63位まで低迷

 予選ラウンド2日間でいずれも「65」を叩き出し、早々に築いた独走態勢。超難度のセッティングでのビッグスコア連発に、周囲はもはや呆れ顔だった。最終日最終組を戦ったリッキー・ファウラーは「彼はこの試合を自分だけのものした」。ヘンリック・ステンソン(スウェーデン)は「ある意味では2日で試合を終わらせてしまった」と一人旅を表現した。

 とはいえ、カイマーが逃げ切れたこの4日間は、ここ数年のキャリアが凝縮されたものでもあった。思えば2010年に「全米プロ」を制し、翌年には世界ランクトップにも立った。しかし、それ以後は低調なプレーも続き、今年4月初旬のランキングは63位まで低迷。4年間の浮沈は「ものごとはそう簡単に進まない」と痛感する期間だった。そして今週はムービングデー(4日間ある大会の3日目)に「72」と停滞。最終日に再び気を引き締める材料としては十分といえた。

「ドイツのゴルフ界にきっと変化がある」

 サッカー大国ドイツで生まれ、今週開幕したワールドカップから目が離せないのは彼も同じ。2日目を終えた段階で、カイマーはサッカー代表選手のひとりからテキストメッセージを受け取った。「最高じゃないか。週末にベストを尽くせることを代表選手全員で願っている」――。それに対する返信は「まだ、ハーフタイムだ」だったという。

「ドイツではやっぱりサッカーの方がゴルフよりはるかに人気があるんだ。でも僕がメジャーで2つ勝って、ライダーカップ出場に向けても結果が出た。ドイツでソルハイムカップも開催される。これから数年間で、ドイツのゴルフ界にはきっと変化があるだろう」

 サッカーワールドカップが開催される2010、14年に獲ったメジャータイトルは、単なる偶然か? バウンスバックを繰り返した4年間。他を圧倒した4日間には、自信を固いものにしていく様が凝縮されていた。

(文・桂川洋一)
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