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不安の残る“ファンタスティック4”
ゴールはメッシ復活の狼煙となるのか?

喜びとともに不安を抱えたスタート

大会屈指の攻撃力を誇るアルゼンチン、メッシの決勝ゴールで白星スタートを切った
大会屈指の攻撃力を誇るアルゼンチン、メッシの決勝ゴールで白星スタートを切った【写真:ロイター/アフロ】

 リオデジャネイロのエスタジオ・ド・マラカナンで行われたワールドカップ(W杯)初戦。アルゼンチンはリオネル・メッシが決めた決勝ゴールにより、ボスニア・ヘルツェゴビナに2−1で競り勝った。


 しかし、マラカナンのスタンドの大部分をアルビセレステ(白と水色)に染め上げた数万人のアルゼンチン人たちは、白星スタートの喜びとともに一抹の不安を抱えてスタジアムを後にしたのではないか。2013−14シーズンのメッシが、低調なパフォーマンスに終始したのはケガを避けるために力をセーブしていたからなのか、それとも本当に輝きを失ってしまったのか。


 この試合を通して彼が見せたプレーは、その疑問に対してポジティブな答えを導き出すにはあまりにも不十分なものだったからだ。

守備的なシステムは完全に裏目に……

 この日、アルゼンチンのアレハンドロ・サベーラ監督は、南米予選で破壊的な攻撃力を誇ったメッシ、ゴンサロ・イグアイン、セルヒオ・アグエロ、アンヘル・ディ・マリアの“クアトロ・ファンタスティコス(ファンタスティック4)”を同時起用する4−3−1−2の攻撃的システムではなく、最終ラインに5人のDFを並べる守備重視の5−3−2でスタートした。


 しかし、これが完全に裏目に出る。開始3分足らずで相手DFのオウンゴールによる先制点を得たものの、そこからハーフタイムまでの出来は散々なものだった。センターバックの3人が誰一人としてまともなパスを中盤に入れることができず、ピボーテのハビエル・マスチェラーノが最終ラインまで下がってボールをさばくため、今度は中盤の受け手が足りなくなる。そのためメッシが頻繁に下がってボールを引き出すのだが、受けた後のプレーがいただけなかった。無理に攻める必要がない中、淡白にドリブル突破を仕掛けては危険な位置でボールを失い、相手のカウンターを招く要因を作っていたからだ。

全盛期を彷彿とさせる決勝ゴール

 ほとんど攻撃の形が作れぬまま、唯一リードだけは保つことができた前半を終えた後、サベーラは誰もが求めていた交代策――フェルナンド・ガゴとイグアインを投入し、システムを4−3−1−2に変更――を実行する。


 システム変更の効果はてきめんだった。マスチェラーノ一人に任せていたビルドアップ役にガゴが加わったことで、最終ラインからの組み立てが飛躍的に向上。さらにアグエロ1人だった前線にイグアインを加えたことで縦へのくさびのパスが入りやすくなり、トップ下のメッシがその落としを受けたところからドリブル突破を仕掛けるシーンが増えていった。


 そして65分、願ってもない形で追加点が生まれる。


 敵陣右寄りでボールを持ったメッシが急激な加速でマーカーのベシッチを振り切り、前方のイグアインへ鋭いくさびのパスを当てる。そのままトップスピードで中央へ走り込みながらリターンパスを受けると、飛び出したDFのタックルをぎりぎりの間合いで左にかわし、すかさず左足を鋭く振り抜いた。


 トップスピードでのカットイン、マーカーの足をすれすれでかわすシャープな切り返し、そしてペナルティーエリアの手前からゴールポストの内側を捉えた左足インサイドでの力強いシュート。奇しくも今回と同じ、旧ユーゴ勢であるセルビア・モンテネグロ戦で決めた06年ドイツ大会での初ゴール以来、8年越しに決めた待望の一発は、全盛期のメッシが毎試合見せていたゴールを彷彿(ほうふつ)とさせるものだった。

工藤拓
工藤拓

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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