日本代表を変える「新防御システム」 ジョーンズHCは進化に自信

斉藤健仁

タックル、防御システムをどう使い分けるか

カナダ戦の後半は相手を無得点に抑えた 【斉藤健仁】

 普通のタックルである「チョップタックル」以外も、リーコーチは、相手の体重を真上にコントロールして自由を奪う「チョークタックル」、タックルのフォロースルーをひねることによって相手を上に向かせる「タートルタックル」も指導。あわよくば、2人目がボールに絡みターンオーバーを狙う。それができなくても、相手の球出しを遅らせることができれば、しっかりとディフェンスをセットし、前に出ることができるというわけだ。

 また、ただ闇雲に前に出るだけでなく、リーコーチは、前に出るディフェンスと、流れるディフェンスを使う状況を細かく設定。タッチラインから見て、相手の攻撃ラインと人数が合っている場合は積極的に前に出る。相手のアタックラインと人数が合わない場合や、相手が早くパスをした場合は、斜めに流れるドリフトディフェンスで人数を同じに、または数的有利な状況を作り出す。接点の近場では、前に出すぎず、少しゲインラインを切られても、次のディフェンスを早くセットすることを意識している。使い分けと選手間のコミュニケーションが欠かせない。

堀江「日本人にしかできないディフェンスを」

スキルと判断力を身につけ、「日本人にしかできないディフェンス」を目指す 【斉藤健仁】

 カナダ戦後、CTB田村優は「まだ(新しいディフェンスシステムを導入して)少し混乱しているかな。急に新しいことをやってもすぐにはうまくいかない。完成度は低くはないけど、慣れることが大事。みんなが同じ方向に向けるように練習していかないといけない」と一定の手応えを口にした。

「世界一フィットネスのあるチーム」とジョーンズHCが自負する日本代表。「(W杯で対戦する)南アフリカ代表、スコットランド代表、サモア代表に打ち勝つようなディフェンスをしたい」と指揮官のターゲットは明確だ。

 今シーズン、スーパーラグビーで先発を勝ち取っているHO堀江翔太も言う。「パナソニックでやっているような、どんどん前に出るディフェンスの方が日本人には向いている。外国人にはできない、日本人にしかできないディフェンスをやっていきたい」。
 来年の9月、ジョーンズHCが信条とするアタックだけでなく、タックルと判断を磨き、前に出るディフェンスで世界を驚かせることができるか。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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