ホスピタリティーを感じたW杯開幕の夜 旅人に優しいサルバドールの街から

中田徹

端々に感じるブラジル人の日本愛

いよいよ開幕したW杯ブラジル大会。直前まで国内の事情もあり盛り上がりに欠けるといわれていたが、やはり始まるとサッカー王国らしい熱を感じられる 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の開幕を3日後に控えた6月9日、僕はサンパウロの空港に着いた。入国審査を待つ人の波をスムーズに裁こうと、入国検査官たちがテキパキと働いていたので、僕の番も早く来た。
 しかし、僕を担当した入国検査官は「あなたは日本人ですね。私は仲間由紀恵(女優)さんが大好きです。日本のドラマは最近、『ルーキーズ』を見ましたよ」と日本への愛を滔々(とうとう)と語り始めてしまった。

 ブラジル人の日本びいきは、1年前にコンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)を見に来た時にも感じた。日系ブランドのタイヤのテレビコマーシャルや新聞広告を見ても「このタイヤはメード・イン・ジャパン」と日本製であることを強調していた。日本語を勉強しているブラジル人とも数多く会い、彼らは口々に日本へのリスペクトを口にしたが、それは長年、日系人たちがブラジルで築いてきた信頼も背景にあるのだろう。

カナリア色のシャツの売れ行きは……

 サンパウロの町には入らず、すぐサルバドールという、かつてのブラジルの首都まで移動した。
 洋服街を歩いていると、カナリア色の豊富な種類のシャツ――例えばネイマールの顔がプリントされたもの、「Hexacampeao」(6回目の優勝の意味。今回のブラジルの目標である)と書かれたものなど――が、バーゲンで10レアル(約500円弱)から20レアル程度で投げ売りされていた。W杯開催に反対する国民が増えているせいか、開幕に向けてムードが盛り上がらず、シャツの売れ行きは悪そうだ。

 サルバドールの地元紙『ア・タルジ』は「サルバドールの洋服売り屋の話によれば、ブラジルの応援シャツの売れ行きは、4年前のW杯と比べて半分程度に落ちている。『開幕戦でブラジルが勝ちさえすれば、突然シャツが飛ぶように売れ始めると思うけど』とその人は語った」と報じている。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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