2得点にも煮え切らないネイマール 母国の地でエース覚醒の時は来るか?

工藤拓

バルセロナでも大舞台で活躍

移籍したバルセロナでも大舞台で決定力を見せていたネイマール。チームの中心となるブラジルでは、彼の覚醒が求められている 【Getty Images】

 しかし、繰り返すが開幕戦から2ゴールを挙げられる選手はそういない。思えば公式戦41試合に出場し、15得点を決めたバルセロナでの1年目のシーズンもそうだった。

 チームにシーズン初タイトルをもたらすデビュー弾を決めたアトレティコ・マドリーとのスーペルコパをはじめ、昨季のネイマールはビッグゲームのたびに天性の勝負強さを発揮してきた。

 チャンピオンズリーグではアウェーのセルティック戦で試合の流れを決定付けるスコット・ブラウンの退場を誘発。ホームのミラン戦では先制点となるPKを獲得し、6−1と大勝したホームのセルティック戦では移籍後初のハットトリックを記録した。

 国内リーグでは初出場のエル・クラシコにてDF2人の股下を通す技ありの先制点を決め、アレクシス・サンチェスへのパスで決勝点の起点にもなった。同じく初体験のバルセロナダービーでもDF2人の股下を通すスーパーパスでアレクシスの決勝点をアシストし、1−0の勝利を手にする立役者となっている。

 足首の負傷で約1カ月の離脱を強いられた1月以降には、自身をバルセロナへ連れてきた張本人であるサンドロ・ロセイ前会長の電撃辞任、恋人ブルーナとの破局といったピッチ外の問題も重なり苦しい時期を過ごした。復帰後もトップフォームを取り戻すのに苦労し、チームも失速したシーズン終盤は、結果、内容ともに尻すぼみのパフォーマンスに終わった。

6度目のタイトル獲得こそが国民の願い

 だがバルセロナでは独特なポジショニングや少ないタッチ数でのプレー、そして攻撃の絶対的中心であるメッシを生かすためのプレーが求められるが、ブラジルでのネイマールは自身がチームの主役となり、自由にプレーすることが許されている。

 開幕戦では思うようなプレーができなかったが、それは戦術的な問題というより、自身のコンディションに因るところが大きかった気がする。4月半ばのコパデルレイ決勝で足の指を痛めた彼は、約1カ月後のリーガ最終節まで実戦から離れていた。1週間前のパナマ戦の時点でも「まだ100パーセントではない」と本人が認めていた通り、コンディションのピークが訪れるのはこれからと考えるべきなのだろう。

 しかも相手はグループAにおける最大のライバルであり、簡単に勝てる相手ではなかった。拮抗した展開になりがちな初戦特有の空気もまた、22歳の重荷になっていた可能性もある。

 開幕戦前日。会見場に笑顔で現れたネイマールは、自身にレンズを向ける200人以上のカメラマンたちを見て「こんな銃撃戦を見たのは生まれて初めてだ」と冗談を飛ばした後、記者からの質問を受ける前にこう言っていた。

「時が来た。すべてのブラジル人が待ち望んできた時が。全国民が僕らをサポートしてくれると信じている。僕らはこのW杯を、6度目のタイトルをブラジルにもたらすため全力を尽くす」

 ロマーリオやロナウドに憧れ、ペレやジーコの系譜を継ぐ伝統のエースナンバーを受け継いだネイマールの初のW杯はまだ始まったばかりだ。彼がブラジル国民の、そして世界中のフットボールファンの期待に応え、この大舞台でも伸び伸びとその才能を発揮できるかどうかを判断するにしても、もう少し時間を与えようではないか。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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