世界数億の人々が待ちこがれた祭典 幾多の疑問と共にブラジルW杯が開幕へ

ブラジルは苦い記憶の払拭目指す

1950年のW杯の苦い記憶を吹き飛ばしたいブラジル。その役割はネイマールらの活躍に懸かっている 【Getty Images】

 4年間待ちこがれてきたワールドカップ(W杯)がいよいよ開幕する。36年ぶりに南米の大地に戻ってきた今大会は、再び最高レベルのフットボールを見ることができるのか。相次ぐスター選手たちの欠場が嘆かれる中、リオネル・メッシはその才能に火をともし、大会の主役となれるのか。無数の疑問が飛び交う中、決して期待を裏切らないことが1つある。開催国ブラジルのマジックである。

 世界で最も美しくポピュラーなスポーツであるフットボールを呼吸するだけで感じられる国、ブラジル。世界で唯一、全19回のW杯に出場し、最多5回の優勝回数を誇るこの国の人々は、半世紀以上も前から自国開催のW杯を制する日が来ることを熱望し続けてきた。

 1950年ブラジル大会、事実上の決勝戦となったウルグアイとの2次リーグ最終戦。引き分け以上が初優勝の条件だったホスト国の希望はアルシデス・ジッギアのゴールによって打ち消された。もう遠い昔の出来事ながら、20万人のファンが埋め尽くしたマラカナンが沈黙に包まれたあの苦い記憶を、この国の人々は今も消すことができずにいるのだ。

現南米王者のウルグアイも虎視眈々と優勝狙う

 タレントぞろいの守備ライン、勤勉なボランチ、効率性に優れたアタッカー、そして勝ち方を知り尽くした監督のルイス・フェリペ・スコラーリとマネージャーのカルロス・アルベルト・パレイラ。万全の体制で今大会に臨むブラジルは、今度こそ地元で優勝することができるだろうか。

 同じ疑問は同大陸における最大のライバルであり、世界中の注目を集めるバルセロナのスター、リオネル・メッシを擁するアルゼンチンにも向けられている。今季のメッシは過去数年ほど輝かしいシーズンを送ることができなかったが、45試合で41得点を挙げながらそう言われてしまうことこそ驚きである。

 この2カ国ほど注目されてはいないものの、ウルグアイも忘れてはならない。彼らの強みは1950年大会の歴史のみならず、重要な選手たちがそろった黄金世代が成熟期を迎えた現在のチームにある。
 2010年大会の主役となったディエゴ・フォルランは既にピークを過ぎたが、エディンソン・カバーニとルイス・スアレスは主役となるべき時を迎えている。2006年からオスカル・タバレス監督が継続的にチームを強化してきた現南米王者は、伝統の堅守も健在だ。

南米大陸での欧州勢初王者誕生は?

 しかしながら、今大会では史上初めて南米開催のW杯でヨーロッパ勢のチャンピオンが誕生する可能性もある。

 現在の世界王者であり、ヨーロッパ王者でもあるスペインは4年前からほとんどメンバーが変わっておらず、引き続き質の高いポゼッションスタイルを継続している。一方で主力選手が軒並み年齢を重ねた現在のチームは平均年齢が高く、2002年の日韓大会でグループリーグ敗退に終わったフランスの二の舞となる危険性も秘めている。

 ドイツはマルコ・ロイスをケガで失ったもののトップレベルのポテンシャルを保ち、ベルギーは各ラインにビッグクラブで活躍するタレントを多数擁するダークホースとして注目されている。ポルトガルはビッグスターのクリスティアーノ・ロナウドが抱えるケガの回復状況が心配され、EURO2012で躍進したイタリアはここにきてパフォーマンスの低下が著しく、イングランドはいつになく低い下馬評と共にブラジルの地に降り立った。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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