石川遼がうなった松山英樹の“攻め”

GDO

常に同世代の一歩前を歩いてきたはずが…

ジャック・ニクラスの眼前で日本人として4人目かつ最年少で、PGAツアー制覇を成し遂げた松山英樹。その攻めの姿勢には、同年代のライバル・石川遼もうならせた 【Getty Images】

 松山英樹の米ツアー初優勝から一夜明けた月曜日、石川遼はミュアフィールドビレッジGC近郊にあるゴルフ場で、黙々と1日36ホールの全米オープン地区予選を戦っていた。ギャラリーもほとんどいないコースでは、普段見慣れない短パン姿のPGAツアープロらが、パインハースト行きの切符を掴もうと一発勝負に挑んでいる。前日までの華やかな世界から一転、そこには勝つか負けるか、ただそれしかなかった。

 2007年に15歳アマとして史上最年少でツアー優勝を果たし、09年には国内ツアー賞金王の最年少記録を塗り替えた石川。13年からは米ツアーにフル参戦し、常に同世代の一歩先を歩いてきた……はずだった。

 だが、松山は末脚鋭い怪物馬のように、大外から一気に石川を抜き去った。10年に日本人として初めてアジアアマチュア選手権を制すると、翌11年に出場した「マスターズ」では日本人初のローアマチュアを獲得。そして迎えた14年、ジャック・ニクラスの眼前で日本人として4人目かつ最年少で、PGAツアー制覇を成し遂げたのだ。

ダブルボギーも松山の自信が見えたティショット

 その日、松山より4時間ほど先にホールアウトしていた石川は、松山の優勝争いをテレビで観ていた。15番でバーディとし首位に立った松山だったが、続く16番(パー3)でティショットを池に入れてダブルボギー。だが、このティショットこそ、石川をうならせたという。

 この日、16番のピンポジションは左から7ヤードで、右手前から左奧へと細長いグリーンの手前にはえぐるように池が迫っている。同組のアダム・スコット(オーストラリア)が右奥に外していたが、これこそある意味セオリーとなる攻め方だった。

 石川が解説する。
「多分、英樹のはミスショットなんだと思うけど、優勝を狙っていればひとつ大きめのクラブ(5I)で奧のラフに行ってもパーを獲れればいいなという感じでやるところを、6Iでバーディを狙ってくる。ピンの右5〜6メートルにつけて、あわよくばというバーディをイメージしていたと思うけど、あの状況でそれをなんの戸惑いもなくイメージできる…」
 それが松山の自信であり、完璧を求める姿勢。それが、今の自分に欠けているもの。

技術以上に2人を隔てている心の問題

「僕は、狭い方(ピンの右サイド)につけてバーディだったんですけどね(笑)」と付け加えた石川だったが、自分と松山では状況が違ったことは百も承知だ。「あの状況で、5Iを打ってオーバーしたら、自分が上手いのか、下手なのかが分からない。6Iで打っていいショットを打てるのか、池に入れてミスをするのかで、上手くなったのか、もっと練習しなくちゃいけないっていうのが分かってくる。5Iで打つのと6Iで打つのとでは、そこに生まれてくるものが変わってくる」
 結果にこだわらず、常に理想のショットを追求することに挑む石川にとっては、まさに象徴的な一打に映った。

 当の松山は「右からの風が来ているのは分かっていたけど、ミスショットで風の影響を受けて池に入ってしまった」とさらりと言った。あのショット以外の選択肢など、まるで微塵もなかったかのようだ。技術以上に今の2人を隔てるのは、繊細に見えて越えがたい、そんな心の問題なのかもしれない。

(今岡涼太)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

GDO

国内外のトーナメント速報、最新ギア情報、レッスン動画など、ゴルフ情報をいち早く配信する専門サイト。米PGAツアーや欧州ツアーと提携し、各ツアーの日本語公式ページも運営する。1900コース以上のゴルフ場予約や、日本最大級の品揃えを誇るオンラインショップも展開し、ワンストップでゴルフファンを満足させる。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント