スナイデル復活の陰にK−1戦士の支え コンディションを万全に戻しブラジルへ

中田徹

ガーナ戦で切れのある動き見せたスナイデル

31日のガーナ戦でコンディションのよさを見せたスナイデル。それには元K−1戦士のサポートがあった 【Getty Images】

 かつて日本で『トルコの稲妻』と呼ばれたグーカン・サキの名前が、ここに来てオランダ人の間で知れ渡っている。
 6月2日、3日のオランダ紙の複数がヴェスレイ・スナイデル(ガラタサライ/トルコ)の復活劇に、このK−1ファイターのサポートがあったことを伝えている。

 ワールドカップ(W杯)ブラジル大会に臨むオランダ代表の2次キャンプは5月20日に始まった。このポルトガル合宿から参加したスナイデルは、コンディションテストを受けたところ、スタッフが「計器が壊れたのではないか?」と驚くほど、素晴らしい数値を出した。
 長らくルイ・ファン・ハール監督からコンディション不良を批判されていたスナイデルだったが、本番前に100パーセントの状態に戻しており、指揮官も記者会見でスナイデルの努力を讃えた。

 コンディションを戻したスナイデルの姿をオランダ国民が実際に見たのは5月31日のガーナ戦。開始早々、アリエン・ロッベン(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)とのワンツーから左サイドを抜け出したスナイデルは、正確なパスでロビン・ファン・ペルシ(マンチェスター・ユナイテッド/イングランド)のゴールをアシストした。
 オランダが5−3−2という新しいフォーメーションを試す中、スナイデルの動きにもまだまだ改善の余地はあったが、それでも非常にポジティブな印象をピッチの上に残していった。

スナイデルがサキを支援していた

立ち技系格闘技の団体「グローリー」で世界チャンピオンとなったサキ。この時はスナイデルがサポートに回っていた 【Getty Images】

 昨年の冬、スナイデルの状態を懸念したKNVB(オランダサッカー協会)は、スペシャルメニューを彼に課していた。このままでは代表落ちもありえたスナイデルは、メニューのほかにK−1ファイターのサキに弟子入りし、ガラタサライの練習、KNVBの宿題に加え、キックボクシングのトレーニングも積んだ。その成果はW杯目前になって露になった。

 オランダはキックボクシングが盛んな国だが、それでも「サキって誰?」と思う国民の方が多いのも事実。サキはロッテルダム近郊スヒーダム出身のトルコとオランダの二重国籍者で、今はアラブ首長国連邦のドバイに住んでいる。

 4月12日、キックボクシングなどの立ち技世界一を決める団体「グローリー」のイスタンブール大会で、サキはライトヘビー級のタイトル戦で勝利し、新チャンピオンとなった。この時は、スナイデルがサキを支える側に回っていたのだ。

サキはブラジルまで行き、スナイデルをサポート

 6月3日付けの『デ・テレフラーフ』紙に対し、サキはスナイデルについてこう語っている。
「僕たちはキックボクシングの練習をすることによって、ヴェスレイのパワー、フットワーク、コンディション、爆発力を鍛えた。さらにヴェスレイは食事にもだいぶ気を使っていた。その結果は、明らかに目に見えている。彼はこうしたことをブラジルに行くためだけにやっているのではない。自分の力でW杯で結果を出したいと願っているんだ。ヴェスレイが願い通りに結果を出せると私は確信している。彼はオランダ代表のモーターだ」

 サキはブラジルへ飛んでサポートを続けることになりそうだ。
「4月12日はヴェスレイが私のためにたくさん助けてくれた。今度は役割が逆転するときだ。私はトレーニング器具を持ってブラジルへ飛ぶ」

 コンディショニングの重要性がフォーカスされている今回のW杯だが、オランダの天才MFにその心配はもうなさそうだ。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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