メジロドーベルからショウナンラグーンへ=吉田豊と大久保洋師“最後のダービー”

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メジロドーベルから受け継がれる厩舎ゆかりの血統馬ショウナンラグーン、大久保洋吉師最後のダービーに挑む 【netkeiba.com】

 大久保洋吉厩舎が送り出した名牝メジロドーベルの血が、その娘・メジロシャレードを経て、大輪を咲かせようと開こうとしている。ダービートライアルの青葉賞で、末脚を爆発させてダービーの切符をもぎ取ったショウナンラグーンだ。来年で定年を迎える大久保洋吉調教師にとって、これが最後のダービーとなる。大久保調教師と愛弟子・吉田豊騎手に、大久保厩舎ゆかりの血統で大一番に臨む心境を語ってもらった。(取材・文:佐々木祥恵)

メジロシャレードの子供を手掛けたい

名牝メジロドーベルの血がダービーの大舞台で開花しようとしている 【netkeiba.com】

 ショウナンラグーンの母・メジロシャレード(父マンハッタンカフェ)は、メジロドーベルの娘ということで期待が大きかった。

「ドーベルの子は牝馬が何頭かいますけれど、ウチの厩舎に来た中ではこの馬が1番だったと思います」

 そのシャレードは、新馬戦は3着と敗れるが、2戦目でレース振りが一変し、未勝利戦を快勝した。「この馬で桜花賞を目指そう」、師にそう思わせるほどの勝ちっぷりであった。

 だがその夢は、直後に破れることとなる。初勝利を挙げた新潟から美浦の自厩舎に戻ったシャレードは、雷の激しい音に驚き、馬房の中で暴れて腰を痛めてしまったのだ。これが思った以上の重傷で、復帰を果たせないまま競走馬登録が抹消され、繁殖入りとなった。

「ドーベルの勝てなかった桜花賞を」とまで夢を膨らませたシャレードだっただけに、その子供を手掛けてみたいという気持ちが大きかった。だが2011年にメジロ牧場が解散してしまい、その願いが叶うがどうかは定かではなくなった。

 繁殖入りしたメジロシャレードはシンボリクリスエスを配合され、2011年2月23日に黒鹿毛の牡馬を出産する。この馬が、のちのショウナンラグーンだ。

 同馬は翌年のセレクトセールに上場されることになり、大久保師はショウナンの国本哲秀氏にオーナーになってくれるよう頼み込んだ。国本氏もまた同馬を気に入り、競り落とすことに成功した。シャレードの子を手掛けたい……大久保師の願いが1つ叶った。

勝ちきれない歯がゆさ、なんとしてもダービーへ

「雰囲気があって良い馬だった」とショウナンラグーンの第一印象を振り返った大久保洋師 【netkeiba.com】

「雰囲気があって良い馬でした。トモに甘いところがあって力強さがまだ足りなかったけれど、歩様も良かったですよ。全体のバランスも良い馬でしたしね」
 これが1歳の同馬を最初に見た時の印象だった。

 デビュー戦は2歳の8月4日だった。
「早めに入厩して調教も順調に進んでいましたので、1度走らせてみようということで函館でデビューさせましたが、7着に敗れてしまいました。馬主さんもちょっとがっかりされたようですけど、当時はまだ身が入っていない感じもありましたし、慌てずにやりましょうということで、休ませました」

 2戦目は、12月21日の未勝利戦だった。
「結構仕上がっていましたし、人気はなかったですけど、良い競馬ができそうだと思ってはいましたが、うまく勝つことができました」

 期待の大きさを物語るように、3戦目はいきなり重賞の京成杯に駒を進めた(13着)。

「前走を使うまでに間隔が開いていたころもあって、このレースが新馬を使って2戦目のような感じで、少し馬に気合いが入ってしまいました。それで元気良く前の方に行き過ぎてしまって……。こういう競馬は合っていないなと思いました」

 その後は自己条件で3戦して、3着2着3着と好走は続くものの、勝てないレースが続いた。

「京成杯の後は500万下から再出発という形で、抑えて競馬をさせたのですが、うまく形になっていきましたし、距離が長くなったらこの形が1番良いのかなとは思いました。ただ勝ち切れなくて歯がゆくてね。1つ勝って青葉賞からダービーにと思っていたんですけどね」

腹を決めて臨んだ青葉賞、そして掴んだダービーの切符

体型は父シンボリクリスエス似だという 【netkeiba.com】

 4月5日の山吹賞の後に、もう1度自己条件のレースを挟むことも考えたが、「無理をさせずに青葉賞1本で行くことにしました。それで権利が取れなければ諦めようと腹を決めていました」

 そして迎えた運命の青葉賞。厩舎ゆかりの血統、師の最後のダービー……1頭の馬に関わるたくさんの人の思いが天に通じたのか、道中ショウナンラグーンは後方でじっと脚をため、最後の直線では坂を上がってギアが替わると、末脚をグングン伸ばして先頭でゴール。ダービー切符を見事に手にしたのだった。

「ペースが遅くて伸びてこられるかなと思いましたけど、結構切れる脚を使ってくれました。直線では4、5着くらいにくるかなと思ったら、左手前に替えたらまた伸びて、“よし! 2着はあるな”と思ったら勝ってくれました。結果的に距離が長くなったのも良かったですし、終い1ハロンの伸びが良かったということでしょうね。ドーベルもオークスを勝っていますし、東京コースも合っているのだと思います」
 ダービーと同距離の青葉賞の勝因を分析した。

 しかし、何から何まで祖母のメジロドーベルに似ているというわけではない。

「馬の格好は種馬(シンボリクリスエス)」

 ドーベルとはどのようなところが似ているのか。血の不思議をさらに聞いてみたくなった。

「ラグーンは、競馬場では装鞍所で鞍を着けさせないんですよ。なので厩舎装鞍をするのですけど、馬房の中ではなく洗い場に張って鞍を置きます。ドーベルの場合は、現役時代に入っていた馬房の壁のすごい高い位置に、蹄の後があってね。どうやってそこを蹴ったんだろうと思うくらいの(笑)。今は壁を修理してその跡は残っていないですけどね。手入れをする時もうるさくて、出張先でも洗い場に畳を張ってもらうくらいでした(笑)。まあそのあたりが似てるのかなと思いますね」

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