父フジキセキと最後の仔イスラボニータ=2頭の背中知る蛯名、ダービーの勝算は

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イスラボニータで二冠に挑む主戦・蛯名と栗田調教師にダービーの勝算を聞いた 【netkeiba.com】

 昨年の6月2日に東京競馬場でデビューしたイスラボニータが、ちょうど1年後の6月1日に再び東京競馬場で走る。しかもそのレースは、すべてのホースマンが憧れる日本ダービーという最高の舞台だ。しなやかな体から繰り出される伸びのあるフットワークで、直線でも楽々抜け出し、ライバルをねじ伏せた皐月賞。ダービーに1番近い馬と言っても過言ではないが、血統面から距離不安も囁かれている。果たして2400mはこなせるのか。そして二冠馬となれるのか。主戦の蛯名正義騎手と管理する栗田博憲調教師に本音を聞いた。(取材・文:佐々木祥恵)

ハープスターとの戦いで得たもの

唯一喫している新潟2歳Sでの敗戦、しかしそこで得た経験は大きかったと蛯名(右)は振り返る 【netkeiba.com】

 一昨年のダービーでは、フェノーメノで悔しいハナ差の2着。あれから2年の月日が流れようとしている今年、蛯名正義騎手に再びダービー制覇のチャンスが巡ってきた。

 デビューからすべてのレースでイスラボニータの手綱を取ってきた蛯名は、同馬の長所も短所も、成長度もすべてその背中から感じ取って来ている。

 イスラボニータに最初に跨ったのは、新馬戦の前だった。
「軽い馬で能力もありそうだと思いました。でもヤンチャな面があって、良くなる可能性はもちろんありましたけど、悪い方に出る可能性もあるかなとも感じました」

 蛯名の心配をよそに、イスラボニータは1戦ごとに成長していった。
「一番きつい競馬をしたと思ったのが、ハープスターに負けた新潟2歳Sですね。掛かり気味だったので、少しずつ馬群の中に入れて競馬をさせました。ハープスターのように外を回った方が楽だったかもしれないけど、あえて馬群に入れて厳しい競馬をさせたことは、負けたとはいえ得たものは大きかったと思います」
 イスラボニータ唯一の敗戦は、のちの皐月賞につながる収穫の多いレースだった。

 そしてイスラボニータの父・フジキセキのデビュー戦の手綱を取ったのも、蛯名だった。新潟の1200mの新馬戦で2着以下に8馬身差をつける圧勝。衝撃的なレースだった。
「絶対にクラシックに行く馬だから、この後手綱を取る角田(現調教師)には、大事にしろよと言った記憶があります」
 蛯名は当時を振り返る。

 フジキセキは弥生賞まで4戦4勝。だがクラシックを目前にして屈腱炎で引退を余儀なくされ、幻の三冠馬とも言われた。そのフジキセキのラストクロップから出てきたイスラボニータとともにダービーに出走する蛯名は、不思議な縁を感じていているようだ。

父フジキセキとの比較

フジキセキにも騎乗したことがある蛯名は、父と仔の違いをどう感じているのか 【netkeiba.com】

 フジキセキとイスラボニータの比較を、あえて蛯名にぶつけてみた。
「フジキセキは、柔らか味に重厚感がプラスされていました。こういう馬はなかなかいません。インパクトがありました。弥生賞では500キロを超えていたように体も大きいし、筋肉もムキムキでしたしね」
 472キロでデビューしたフジキセキは、現役最後のレースとなった弥生賞では508キロになっていた。

 一方、イスラボニータは、昨年デビュー時が462キロで、前走の皐月賞も462キロ。馬体重だけ見れば2歳時から、大きな変動はない。
「さほど大きくない分、軽さがあります。そして大き過ぎず、小さ過ぎずというのが、この馬の良さでもあると思います」
 そして更に言葉を継いだ。

「イスラボニータは、フジキセキを引き継いでいる部分もあるのでしょうけど、2頭はタイプが違います。それぞれに良さがある。イスラボニータの1番の長所は体の柔らかさ、しなやかさ。イメージ的には、ネコ科の動物ですね。まあネコ科には乗ったことはないですけど(笑)。俊敏に反応できるのも、このしなやかさがあるからだと思います」

 フジキセキとは全くタイプの違うイスラボニータだが、正攻法の強い競馬で皐月賞を制し、出走すら叶わなかった父の無念を晴らす形となった。

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