「日本がサプライズになることもある」 ドイツの重鎮、マテウス氏インタビュー

レーブは1トップで戦いたくない!?

W杯はブラジルで観戦する予定のマテウス氏(左)。大会中、交通と運営面で問題が出ることを懸念している 【写真:AP/アフロ】

――ミロスラフ・クローゼ(ラツィオ/イタリア)も、ケガの問題に対処しなければなりませんでした。マリオ・ゴメス(フィオレンティーナ/イタリア)やマックス・クルーゼ(ボルシア・メンヘングラードバッハ/ドイツ)、シュテファン・キースリンク(レバークーゼン/ドイツ)といったストライカーを家に残しておくというレーブ監督の決断が理解できますか?

 それに、ハンブルガーSV(ドイツ)のFWピエル=ミシェル・ラソッガを付け加えてもいいね。彼もケガをしているけれども、今季は素晴らしい記録(13得点)を残した。われわれはレーブのことが分かっている。レーブはこの数年間、ずっと彼についてきてくれた選手たちを信頼している。ルーカス・ポドルスキ(アーセナル/イングランド)を見てみるがいい。しばらく前にはその名が議論に上がっていたが、レーブは彼を信頼し続けた。それは良いことだが、疑問もある。レーブのプランとは、どんなものなのか? クローゼがいることで、チームにセンターフォワード(CF)は彼1人しかいないが、おそらくレーブは1トップで戦いたくはないだろう。それは単なるオプションにしておきたいはずだ。はっきりとは分からないがね。

 3、4人の選手が、“偽9番”としてプレーできる。ゲッツェやミュラー、(メスト・)エジル(アーセナル/イングランド)はフランス相手(13年2月の親善試合、2−1で勝利)に、非常にうまくその役をこなしていたと思うし、ポドルスキも前線でプレーできる。そういう意味では前線でプレーできる選手たちがそろっているが、ゴメスやキースリンクのようなCFはいない。だが、おそらくそれがレーブのプランなのだろう。フィジカルの強いCBに対して、小柄で素早い選手たちで立ち向かうのだ。開幕前に決断を下すだろうが、大会期間中にも柔軟に対応することができるはずだ。

――ドイツカップ決勝でバイエルンは、3バックで戦いました。W杯では、戦術がすべての鍵になるとお考えですか?

 そういう考えには笑ってしまう。私の現役時代にも、3バックで戦ったことがある。98年に04年もそうだった。監督としてパルチザンを率いた時も、チャンピオンズリーグではそのシステムで戦った。3バック? 大事なのはどういうタイプの選手を擁しているかだ。この戦術は、目新しいものではない。イタリアも「ユーロ2012」のスペイン戦で用いたし、決勝ではそうではなかったが、グループステージの初戦では機能していた。なぜ(イタリア代表監督チェーザレ・)プランデッリが決勝で4バックを採用したのか不思議に思ったよ。今日のヨアヒム・レーブのように、(ジョゼップ・)グアルディオラはバルセロナでもっと柔軟だった。(ハビ・)マルティネスには、2人のDFと一緒に守備的MFとしてプレーするだけの知性がある。私にとって、これは新しい戦術ではない。というより、10年か15年前に成功した手法の復活といった代物だ。誰もがトレンドについて話をしているが、良い監督というのは、使うべき試合において正しい戦術を用いる人物を指すんだ。

これまでのW杯で日本は経験を欠いていた

――どんな大会になると予想しますか? ブラジルには行かれますか?

 行く予定だし、少し混沌とした大会になると予想している。ヨーロッパで行われる場合と、組織づくりを比べてはいけない。この数カ月で2度ブラジルに行ったが、ドイツでは慣れていないものに対して、自身をアレンジしていく必要があるね。路上では特にそうだし、言葉の問題もそうだ。南アフリカの方が、その点では楽だった。コンフェデレーションズカップでは、ブラジルの様変わりに対するデモを目にした。もっとずっと大事なことがリストに載っているというのに、W杯へあまりの大金が投じられていることに多くの人が怒っている。選手だけではなく、ファンも対処を強いられる未知の問題が出てくるだろう。交通と運営という点で、問題が出てくるはずだ。マラカナンスタジアムに行ったが、人々は正しい入り口を教えるのに苦労していた。ドイツのスタンダードと比較して、よく準備ができていなかったんだよ。

――ベルギーは今大会のダークホースとして名前が挙げられています。日本を挙げる人もいます。サムライブルー(日本)がサプライズを起こすことはあると思いますか?

 全体的に見て、非常にバランスが取れた大会になると思う。行方を分けるのはディテールだ。日本はドイツとイングランドでプレーする多くの選手たちから恩恵を受けている。その選手たちはそうすることで、多くを学んでいる。彼らは毎日世界最高の存在に触れ、それが日本代表の利点になっている。日本は予選突破を経験した。野心を持ち、素早い好選手を擁しているが、これまでのW杯では経験というものが欠けていた。今回は世界最高のリーグでプレーする選手を多く擁してやって来る。もちろん、日本はアジアのチームとして次の段階へとたどり着けるだろうが、世界王者にはならないだろう。そこについては、現実的にならなければならない。だが、彼らの大いなる進歩には敬意を示さなければいけない。数年前(11年)にドイツで世界チャンピオンになった女子代表チームについても同様だ。サッカーは日本でも人気で、彼らは野心にあふれている。サプライズになることもあるだろう。

――どこがサプライズになりそうですか?

 ベルギーの名前が挙げられているね。全般的に、得点が多く生まれるとは予想していない。出場チームはよく準備をしてくるし、20〜30年前よりフィジカル面も成長している。優勝候補と言われるチームも、目標にたどり着くまで苦労するはずだ。例えば、ドイツとの親善試合で、チリの強さを目にしたことだろう(1−0)。レーブのチームが勝てたのは、とてもラッキーだった。南米のチームは概して、ホームアドバンテージの恩恵を受けることになる。チリやウルグアイ、エクアドル、コロンビアとの対戦は、厳しい試合になるだろう。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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