「日本がサプライズになることもある」 ドイツの重鎮、マテウス氏インタビュー

90年のイタリアW杯優勝メンバーのマテウス氏。ブラジル大会のドイツ代表、そして日本代表について語ってもらった 【Bongarts/Getty Images】

 目前に迫ったワールドカップ(W杯)ブラジル大会に向け、1990年W杯イタリア大会の優勝メンバーにしてテレビ局『SKY』で解説者を務めるローター・マテウス氏のインタビューが、同局の取り計らいで可能となった。マテウス氏はケガ人に悩むドイツ代表や、躍進著しい日本代表について語ってくれた。

周到に準備を整えておくべき

――マテウスさん、W杯の優勝タイトル予想で、ドイツ代表に賭けますか?

 ドイツが世界王者にならないという可能性は、他の道筋よりも大きなものだろう。そう予想するのは彼らのクオリティーではなく、対戦相手となる他チームを考えてのことだ。開催国のブラジルは、優勝候補筆頭だ。タイトルホルダーのスペインと今回出場する南米の数チームも全般的に候補の一角になる。安全なところに賭けるなら、ドイツ以外の選択肢を選びたいね。ただし、それは彼らの格に疑念を持っているからではない。

――ブラジルでのドイツ代表には、どんな期待が持てそうでしょうか?

 前回W杯南アフリカ大会と同様に、ドイツはトップの4チームには入る。このチームにはクオリティーが備わっているが、私が高く評価しているチームであるアルゼンチンと、準々決勝でぶつかるかもしれない。他の多くの試合と同じように、これは厳しい一戦になるだろう。普段からドイツ代表は、ブラジルで自分たちが直面する物事に対して、周到に準備を整えておくべきだ。これは私自身も経験したことでもある。組織づくりや医療スタッフなど、最高のホテルにシェフ、そして自由時間の行動と、(用意されなければならないのは)チームにとってベストのものだけだ。このように長い期間一緒に過ごすときには、こうしたものが重要な要素になる。このチームには格が備わっているし、特に守備が安定すればなおさらのことだろう。

ケディラだけに頼るべきではない

――守備がうまく機能するときは、中盤の守備的なポジションでバスティアン・シュバインシュタイガー(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ)の調子が良く、サミ・ケディラ(レアル・マドリー/スペイン)が元気な場合でした。彼らの負傷は、チームにとって大きな問題となるでしょうか?

 他の国も同じ問題を抱えている。もちろんドイツ代表には、長く続いた負傷のために、まだベストの状態ではない選手たちもいる。そうした選手が4週間の間にベストのコンディションに持っていくことができるとは思わない。現役選手だった頃の私自身のケガの経験から、それは分かっている。たとえ復帰して1試合良い試合をしたとしても、また調子を落としてしまうものだ。こういうことは、W杯のような大会では許されるものではない。

――お話しされているのは、ケディラのことだと思います。多くの人が、彼はチームの中でも数少ない、ピッチ上でリーダーになるかもしれない選手の一人だと言っています。

 彼は重要な選手であり、レアル・マドリーに移籍してから人間的にも大いに成長した。私がインテルに移籍した時のようにね。だが、彼は一番長く負傷していた選手の一人であり、5カ月間も試合に出場していなかった。今ではもうプレーできるようになっていることに、祝福を述べたい。私は彼が戻ってくると予想してきたが、この最高レベルにおいて、われわれ全員が期待しているように4週間で(決勝までの)7試合を戦うという事態に耐えられるかには疑問符がつく。次のラウンドに進むため、次から次へと試合を戦っている時には、そういうことが必要になる。ドイツはケディラだけに頼るべきではない。それは大きなリスクとなるだろう。1試合起用したら休ませるなど、何か穴埋めする案が必要だ。あのようなケガをした後で、7試合を戦うことは可能ではあるが、最高レベルではプレーできない。

――ケディラの他に鍵となる選手は誰でしょうか?

 主にバイエルンの選手たちに加え、マルコ・ロイスとマッツ・フンメルス(共にドルトムント/ドイツ)だ。(フィリップ・)ラーム(バイエルン)のような選手たちはピッチ上だけではなく、ピッチ外でも重要な存在だ。それにシュバインシュタイガー。「ユーロ(欧州選手権)2012」でも経験したが、ケガをしている時の彼は自分のことにかかりきりになってしまう。それは当然のことではある。彼が元気でいることが重要だが、この8〜10カ月はそうではなかった。彼はこの数年、ケガをしていることが多かった。個性という点では、(トマス・)ミュラー(バイエルン)はチームにとって大事な選手だと思う。スピリットがあり、大事なゴールを決められる。2010年の南アフリカ大会で証明(大会得点王を獲得)したようにね。ロイスはこの3カ月、素晴らしい試合をしてきたが、(マリオ・)ゲッツェ(バイエルン)も決定的な役割を担うかもしれない。バイエルンではなかったことだが、もし監督が彼に信頼を寄せて、自分は重要なんだという感覚を与えられればね。

 フンメルスは守備陣の中心で重要な役割を任されている。彼がクオリティーを備えていることに疑いの余地はないが、攻撃的な動きをやめる必要がある。彼はセンターバック(CB)であり、プレーメーカーではないんだ。もし彼が自身のメインのタスクである守備に集中できれば、とても重要な選手になり得る。フンメルスはドイツカップの決勝(0−2)でも素晴らしいプレーをして、ピッチ上でベストな選手の一人だった。だが、いまだに試合を動かそうとしたり、前へと出て行く時にミスをしていた。彼は物事にシンプルに集中すべきだ。そうすれば、もっと役立つようになる。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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