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F1と自治体、互いに求め合う関係
鈴鹿市のケースから見る協力と経済効果

自治体の協力なくしてレース開催は不可能

日本GPは87年から鈴鹿サーキットで開催されている(07、08年は富士スピードウェイ)。近年、開催権料の高騰もあって自治体との協力は欠かせない
日本GPは87年から鈴鹿サーキットで開催されている(07、08年は富士スピードウェイ)。近年、開催権料の高騰もあって自治体との協力は欠かせない【Getty Images】

 現在、2014年シーズンの大きな問題となっていることがある。静かになったと評判(?)のターボエンジン音だ。オーストラリアGP主催者は「エンジン音は観戦するときの大きな魅力で、強く改善を求める」として、他のGP開催国主催者とともに批判。早速、メルセデスAMGがテストにラッパ型の排気管を試してみたが効果はなく、15年シーズンに向けた全チーム共通の課題となりつつある。


 通常、こうした批判はレースメディアやドライバーたちがコメントを通じて行うことが多いが、各国のレース主催者が共闘する形での批判は異例だ。どうして主催者がこうした対応をするのかというと、現在のレースは自治体からのさまざまな協力なしには開催ができないという事情がある。


 一般的にレースは他の興行と同じで、チケットを販売し、そのチケット代を収入源としてレースを招致している。だが、他と大きく違うのは、レース招致の費用として数十億円という費用がかかることと、テレビ放映権などの権利は開催地に与えられていないということ。サーキットの広告看板や敷地内での店舗出店に至るまで、主催者が独自に販売することはできず、できた場合でも多額のライセンス料などが課せられている。つまり、レース主催者にとっては、入場料が唯一の収入源であり、多くの観客に来てもらうことが収入を伸ばすことにつながるのだ。


 開催権料の高さに音を上げる主催者は多い。近年のF1レースはアジア圏や中東が台頭し、ヨーロッパ開催のレースが激減した最大の理由も、この開催権料の高騰にある。一部では開催権料が40億円を超えるグランプリもあると言われている。もっとも、アジア圏や中東が高額な開催権料を支払ってもペイできるだけの観客を呼べているのかというと、内情はそうでもない。日本GPを除けばほぼ赤字と断言してもいいだろう。それなのにレースが継続開催されているのはなぜか? そこには、国や自治体、国営企業等による赤字補填やインフラなどでの協力があるからだ。


 近年、世界中の国々が競っていることがある。自国の観光アピールだ。観光客が来ればそれだけ消費が増える。海外からの観光客であればなおさらだ。だからこそ、世界各国は世界遺産の認定や高いタワー建設など、とにかく観光の目玉を造ろうとしている。五輪やサッカーのワールドカップ(W杯)もそう。2002年の日韓W杯開催時のフィーバーぶりや20年東京五輪・パラリンピック開催に関連するニュースを見れば、そこにどれだけの経済効果があるのかは想像に難くない。そして五輪やサッカーW杯に並ぶ、ワールドワイドなイベント、世界三大スポーツの1つがF1レースとも言われている。

06年日本GPの経済効果は292億円以上

鈴鹿市は09年に『F1経済効果調査報告書』を発行。日本GPの経済効果は292億円以上と計算した
鈴鹿市は09年に『F1経済効果調査報告書』を発行。日本GPの経済効果は292億円以上と計算した【田口浩次】

 では、F1レースにどれだけの経済効果があるのか? これを示したデータが三重県・鈴鹿市にあることが分かった。日本GPは1987年から鈴鹿サーキットで開催されているが、07年と08年は開催地が富士スピードウェイ(静岡)に変更となった。この2年間、鈴鹿市とその周辺における経済的損失は非常に大きなものだった。そこで、鈴鹿サーキットでの日本GP復活を目指した鈴鹿市を中心とした自治体が、F1の経済効果をしっかり検証した。それが09年3月に出された『F1経済効果調査報告書』である。06年開催の日本GPの経済効果が明らかにされている。


 この報告書では、経済効果推計の方法として、実際に観戦に来た観客による宿泊費や交通費、飲食費等の消費支出、参戦チーム関係者の宿泊費、交通費、飲食費、プロモーションイベント、バスチャーターなどの消費支出、さらに日本GP主催者による大会運営費用などから推計している。実際、消費にあてられた金額の合計は126億9300万円。雇用面でも鈴鹿市だけで400人という数字が記載されている。総観客数36万1000人という過去最高の集客を誇った06年の数字だけに、F1経済効果のピークと言えるかもしれないが、それでも金額の大きさは注目に値する。この総額の内訳をざっと検証すると、一番の割合はチケット購入費で41億5700万円。交通費が29億4600万円、グッズなどのお土産購入費が17億9300億円、飲食費が17億5000万円、宿泊費が16億8600万円と続く。これらは直接的な消費だが、報告書ではさらに、F1を招致したことによる日本全体への経済総合効果は292億9400万円に上る、と計算している。


 そして実際の観客2923人のアンケート回答から、06年時点ではF1観戦に来た観客が、鈴鹿サーキット以外に他の観光地への立ち寄りをしているのは、わずか12%であることも分かった。こうした調査結果から、鈴鹿市は周辺自治体と一緒になって、日本GPを筆頭に、モータースポーツを観光の振興に役立てることを目指した活動を行っている。

田口浩次

スポナビDo

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