全国6000カ所制覇 移動をスポーツとして楽しむ
【Getty Images】
ハンドルネーム「紫煙(しえん)」――IT関連企業で働く33歳の男性だ。電車や車を使い移動することそのものをスポーツに変えてしまった彼に話を聞いた。
「マイル修行」のために那覇やシンガポールを往復
旅先から会社の定時に間に合う飛行機のリスト 【日本エクストリーム出社協会】
「これは会社の定時に間に合う飛行機のルート。こういうのを調べるのが好きなんです」
ほかにも、シンガポールを夜中に出発して成田へ朝7時に着く便もあります。早く着きすぎちゃうので、ちょっと時間つぶしをしたりします」
仕事のない土日を使い、那覇やシンガポールを往復。目的は観光ではない。飛行機のマイルを貯めることだ。仲間たちの間では「マイル修行」と呼んでいるそうだ。
移動に25時間、滞在はわずか2時間だけも…
片道25時間をかけて移動し、わずか2時間だけの滞在。位置情報ゲーム界隈では有名という「小笠原タッチ」も達成している 【日本エクストリーム出社協会】
パズルの答え合わせをするように予定を消化していく楽しさがある、と紫煙さんは表現する。
「まだ制覇していない場所があることが気持ち悪くなってきてしまって。制覇のために行かなきゃ、コンプリートしなきゃ、と。究極の話『その場所にさえ行ければいい!』という気持ちになっていくんです。行くには時間とお金が必要だけど、もはや、それさえあればいいんだ、と」
「謎の義務感です。とっとと終わらせようと。その地点を通過するのが目的なので、その場所に達した時点で、目標は次の場所へ。同じ場所には留まりません」
普通の人なら楽しむはずの観光には見向きもせず、その場所へ移動することそのものを目的にして、紫煙さんはさまざまな手段を駆使する。その横顔からは、まるでロードレースのメカニックのようなストイックさすら感じる。