現実を直視する松山英樹のメンタル術

GDO

“ツアー初優勝”には届かず

松山は結果にこだわり、自身にもダメ出しをすることで進歩につなげている 【Getty Images】

 ベン・ホーガンの面影がコース内の至るところに息づく米国・テキサス州のコロニアルCC。歴史と伝統に彩られたコースで5月22日〜25日に行われた米国男子ツアー「クランプラザ招待」は、松山英樹が同ツアーで初めて最終日最終組を経験した大会となったが、プレーオフには3打及ばず、“ツアー初優勝”には届かなかった。

 よく“朴訥(ぼくとつ)”という表現をされる松山。言葉が少なくぶっきらぼうなイメージが先行しているが、最近は「難しい質問ですね……」と頭を悩ませながらも、必死に言葉をつないで自らの感情や考えを説明してくれる。最終組での18ホールを回り終えた直後、記者たちの質問に答えた松山の言葉の中に、彼独特の思考法が垣間見えたので紹介したい。

――(前回優勝争いをした)フェニックス・オープンと比べて進歩が感じられた部分は?

「ないです」

――フェニックスでは緊張感からパッティングに苦しんだ。今日の感触は?

「悪くなかったけど、入るか入らないかの差。勝つためには入れなきゃいけないんで、感触とか言っていられない。それが今日は入らなかった、残念ながら」

――最終日最終組での経験は今後に生かされると思うが

「最終日最終組で回って優勝したときが、経験を生かせたと言えるときだと思うので、優勝するときまでは、しっかりと練習していきたい」

結果至上主義の松山

 ゴルフにおけるメンタル術では、どういう考え方が正しいか、正しくないかということは一概には言えず、その人にあったものが一番正しいと思うのだが、最近では宮里藍や石川遼のように、どんなに悪い状況の中にあっても良い部分を見つけ出し、ポジティブさを維持し続けようとする人たちが多くなっているように感じる。もちろん、口には出さずとも心の中で反省し、葛藤し、克服しようとしていることは、どの選手でも同じだろうが。

 だが、松山は結果至上主義にのっとり、ダメなものはダメと断言する。その姿勢は潔さともとらえられる。ポジティブな答えを引き出そうとしても、言下に否定されるか、空回りするのがオチだ。

 松山と同じ傾向を持つのは藤田寛之だ。「失敗に向き合わないと、克服できない」と話す藤田は、否定的な言葉を使うことに躊躇(ちゅうちょ)がない。時に「このまま、この人はゴルフを辞めてしまうのではないか?」と思ってしまうほどに自分をおとしめる。だが、そういう厳しい言葉を自分に浴びせて、さらに公にすることで、問題意識や危機意識を高め、さらなる進歩につなげているのだ。

 世界一レベルの高い米国ツアーで、結果を残すことは容易ではない。アーノルド・パーマーは、プロにもアマチュアにも共通するゲームの秘訣として、以下のことを明かしている。「悪い日を振り払い、忍耐強く、心の中でいつの日か再び頂点に立てることを信じるメンタルを養うこと」。これからも、松山の自分自身へのダメ出しは続いていくことだろう。

(文・今岡涼太/テキサス州フォートワース)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

GDO

国内外のトーナメント速報、最新ギア情報、レッスン動画など、ゴルフ情報をいち早く配信する専門サイト。米PGAツアーや欧州ツアーと提携し、各ツアーの日本語公式ページも運営する。1900コース以上のゴルフ場予約や、日本最大級の品揃えを誇るオンラインショップも展開し、ワンストップでゴルフファンを満足させる。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント