キプロス戦は大久保がトップ下で先発も 一次合宿を終え、スタメン争いも本格的に

元川悦子

いまだ不透明なボランチの陣容

代表での試合経験が多くはない森重が、世界トップレベルのFW陣にどう適応していくのかは、本大会の行方を左右する重要な要素の一つといえる 【Getty Images】

 一方、長谷部が長期離脱していたボランチの陣容がどうなるのかも気になるところ。指宿合宿では遠藤、長谷部、山口蛍、青山敏弘の4人が組み合わせを変えながらプレーしていたが、途中の3日間は「遠藤・山口」「長谷部・青山」というコンビが続いたようだ。ザッケローニ監督にはプレー回数の少ないコンビを優先的に組ませ、意思疎通をスムーズにさせる狙いがあったと見られる。

「ヤットさんとやる時は、できるだけ守備の負担を減らすようにしています。状況を見つつ、自分も前へ行く時は行く感じでできたらいい」と山口は遠藤の攻撃力をいかに引き出すかを第一に考えて動いているという。青山も「日本のよさはタテの速い攻撃。もちろん遠藤さん、長谷部さんが出るといい攻撃ができるのは分かっていますけど、自分が出ても遜色なくできるかが重要。できないとW杯で勝ち上がっていけない。必死についていこうと思っています」と、これまで鉄板ボランチといわれた2人と同レベルのクオリティーを出せるように意識を研ぎ澄ませている。後発組の彼らは、南アフリカ大会経験者の2人に追い付こうと必死の姿勢を見せている。

 おそらく今回のキプロス戦では、それぞれの組み合わせを半分ずつテストするのではないか。復帰したばかりの長谷部の試合勘不足も懸念されるだけに、ブラジルW杯では「遠藤・山口」コンビがメインに位置づけられる可能性も大いにある。彼らが完璧に連動できるかどうかを、指揮官も改めて確認しておきたいはず。今季J1ではチーム事情もあって目覚ましい活躍ができているとは言えない2人が、どこまで世界基準のプレーを見せられるか。そこはしっかりと見極める必要がありそうだ。

吉田はほぼスタメン確実。その相棒は――

 センターバックの陣容がどうなっていくのかというのも、指宿合宿での1つのテーマだった。ボランチ同様、ザッケローニ監督は吉田麻也、今野泰幸、森重真人、伊野波雅彦の4人を順番に回しながらプレーさせる形を取った。

 吉田も長谷部、内田篤人と同じようにケガから復帰したばかり。それでも、長くコンビを組んできた今野が「一緒にやってみた感じだと問題なさそう。ボールの感覚も悪くなかったし、ステップとかも全然悪くなかった」と太鼓判を押しているだけに、あとは試合を積み重ねていくだけという段階に来ているようだ。189センチの高さ、イングランドでの国際経験、ロンドン五輪で6試合を戦い抜いた実績を踏まえると、その吉田が最終ラインの軸を担うのはほぼ確実といえる。問題はそのパートナーが今野、森重のいずれになるかという点。それは本大会の行方を左右する重要な要素といえる。

 吉田自身は「森重君はすごくいいタイミングでボールを出せるので、僕もなるべく後ろで時間をかけずにサイドチェンジしながらボールを彼に預けられるようにしたい。今ちゃん(今野)はボランチを使いながらビルドアップするタイプなんで、ちょっとタメが必要だと思うし。あと、左右の位置が変わるので、そこの意識は大事になりますね。どっちとやっても遜色なくやれると思います」と語っていたように、それぞれとのプレーを重ね、質を上げていくしかない。

 ザックジャパンでの試合経験がまだ7試合しかない森重にしても、世界トップレベルのFW陣にどう適応していくかが課題となる。
「とにかくチャレンジすることが今の自分には必要。チャレンジしたうえで何がダメで何がよかったかっていうのは分かると思うし、その繰り返しなので、勇気を持ってどんどんチャレンジしていきたい」と思い切ってぶつかっていく姿勢を示した。キプロス戦では彼を含めたDF陣がどう使われるかをチェックすることも肝要だ。

 指宿合宿での疲労がピークに達しているため、27日のゲームは内容的にはあまり期待できないかもしれない。ただ、香川も「4年前は強豪相手に3試合やって負けて、うまくいかなかった危機感で開幕を迎えたけど、今回は逆に3戦通してあまり強くない相手。だけど3試合は悪くても何の問題もない。自分たちがどうやって初戦(コートジボワール戦)に持っていくかだと思う」と言うように、あくまで本大会に照準を合わせることが重要だ。まずはキプロス戦でしっかりと現状を把握し、問題点を洗い出したいところだ。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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