敗れたハープスター33秒6の“不発” 勝ったヌーヴォレコルト岩田の騎乗光る
岩田騎乗のヌーヴォレコルトがハープスターを破りオークス戴冠 【写真:中原義史】
ヌーヴォレコルトは今回の勝利でJRA通算6戦3勝、重賞は初勝利。騎乗した岩田、同馬を管理する斎藤誠調教師ともにオークスは初勝利となった。また、岩田は史上7人目、地方競馬出身騎手としては初となる5大クラシック完全制覇を達成した。
一方、断然の1番人気に支持されていた川田将雅騎乗の桜花賞馬ハープスター(牝3=栗東・松田博厩舎)は、直線大外を強襲するもクビ差届かず2着に惜敗。さらにクビ差の3着には内を伸びた北村宏司騎乗の3番人気バウンスシャッセ(牝3=美浦・藤沢和厩舎)が入った。
再び“ない”位置から飛んでくるも……
大外から強襲したハープスターだったがクビ差届かず2着 【写真:中原義史】
結果はご覧の通り、クビ差届かずの2着惜敗。今度は届かなかった。ハープスターが負けるとしたら、たぶんこういうパターンなんだろうな――という負け方だった。これも追い込み馬の宿命であるから、そこまで大きな驚きはない。ただ、自分としては思っていた以上に、この敗戦が早くやってきてしまったためだろうか、レース後は何となく寂しい気持ちが押し寄せた。
「進みきれないままゴールしてしまった」
数字としては素晴らしい末脚を繰り出しているが、川田の感覚的には「弾けきれていない」 【写真:中原義史】
レース後、川田はそう語っていた。ゲートは出遅れもなく普通のスタートを切ると、いつもより二の脚がついて馬群に取りつくのは楽だったという。ポツン最後方を予想していた僕としても、道中のハープスターは実に楽な追走だったように見えた。ただ、ちょっとしたアクシデントもあったようだ。
「2コーナー過ぎで前の馬とぶつかりそうになりました。そこで少し力みかけましたね。でも、力むくらい今日はやる気になっていると、そこはいい方向に解釈しました」
それで折り合いを欠くことはなく、リズムよく追走できたと川田。「直線の雰囲気もいつも通りでした」と特に変わったところもなく、あとはこれまで通り、自慢の鬼脚を長い府中の直線で爆発させるだけだった。ところが……。
「終始、内にササりながら、前になかなか進みませんでした。数字を見ればある程度の脚を使っているとは思うんですが、進みきれないままゴールしてしまった感じですね。弾けきれなかったと思います」
ハープスターの上がり3ハロンは、出走メンバー中でただ1頭33秒台マークの、33秒6。勝ったヌーヴォレコルトよりも0秒6も速いのだから、とんでもない脚を使っていたことが分かる。ただし、これは数字の上での話。主戦・川田の感覚としては、まったく弾けていないのだ。
この“不発”の要因が例え距離だったとしても、この時期の3歳牝馬は距離適性よりも絶対的能力の差で2400メートルのオークスは勝てるものだと、個人的には思っていた。だからこそ、この時期にハープスターが同世代の牝馬に完敗してしまったことが、自分の中の“寂しさ”の原因なのだと思う。
松田博師「分からん」どうなる凱旋門賞
川田よりさかのぼること10分ほど前に検量室から出てきた松田博資調教師は、時折笑顔を見せながら、サバサバと答えた。「まあ、強いのは(ハープスターが)一番強いからなぁ。よう走ってるよ」と、強さを十分に見せての敗戦だっただけに、ある程度は納得している様子だった。
ただ、本来ならばオークスを勝って勇躍パリ・ロンシャンの凱旋門賞へという青写真だっただけに、この敗戦を受けて、どう判断するのだろうか。
「それは分からんよ。この後の馬の様子も見なきゃならんし」
おそらく今後、オーナーや生産牧場と話し合った上で正式な出否の決断が下されるのだろうが、個人的な見解としては、ロンシャンの夢は少し遠ざかってしまったような印象がある。それでも、松田博調教師が言っていたように、強いのには間違いないのだから、ハープスター級の3歳牝馬が凱旋門賞に挑戦した場合、どれくらいの競馬ができるのかを見てみたい気持ちの方が強い。全く無責任なことを言ってしまえば、今回の敗戦を糧にしてぜひチャレンジしてほしいところだが……。