“悪夢”払拭の希望見出すイングランド W杯に若き獅子たちの活躍を期待する

寺沢薫

代表経験が多い選手も多く、勢いだけのチームではない

若手が多くそろう中、代表キャップ数100以上を誇るジェラード(写真)らも含まれ、勢いだけのチームというわけではない 【Getty Images】

 さらに、「希望の星」と言われるMFジャック・ウィルシャー(22歳)や、好調リバプール組のMFジョーダン・ヘンダーソン(23歳)、FWダニエル・スタリッジ(24歳)など25歳以下の選手が 10人を占め、2年前のユーロから10人が入れ替わったチームには、前回W杯を知るメンバーが5人(スティーブン・ジェラード、フランク・ランパード、ジェイムズ・ミルナー、グレン・ジョンソン、ウェイン・ルーニー)しかいない。
 だが同時に、テレグラフはこのチームの代表平均キャップ数が「26.5」で、2010年(39.2キャップ)、2006年と1990年(32.1キャップ)に次いで歴代4番目に多いというデータも示している。つまり、今回のチームは若さに任せた勢いだけのチームではないということだ。

 現に、代表歴が浅い選手もいる一方で、100キャップ以上を誇る選手(ジェラードとランパード)がW杯に複数そろうのは代表史上初めてのこと。加えて不動のレギュラーには、89キャップのルーニーや50キャップのジョンソンもいる。

シアラーも「刺激的なメンバー」と絶賛

 昨年12月の時点で、「正直、グループを突破できるとは思えないし、そう思っている人も多くないはず」と語った元イングランド代表FWアラン・シアラーも、メンバー発表後には「刺激的なメンバーだ。経験と若さが融合している。私はイングランドが準決勝に進めると思う」と手のひらを返した。

 各メディアの論調も概ね好意的で、ホジソンのチーム選考は明らかに国内で歓迎されている。
「もちろん、このメンバーがブラジルで成功をもたらすという保証はない。しかし、少なくとも近年の大会よりも望みを持つことはできる。若さと経験のミックスは、これまでのイングランドに不足していたものだ(テレグラフ)」
「新鮮さ、活力、勢いを持ったチームになった。これは新しいイングランドだ。より活発で攻撃的なプレースタイルを見せるために、過去の制約から解き放たれたチームなのだ。期待をし過ぎてはいけない。だが、ホジソンは国民に欲しかったものを与えてくれた。(デイリー・ミラー)」
「ホジソンが正しいかどうかが分かるのは3試合を終えてから。だが、彼が最初に見せた大胆さは賞賛に値する。(ブラジルの)厳しいコンディションの中で戦う大会だが、若者たちが持つ生来のフレッシュネスが大切な要素になるかもしれない(BBC SPORT)」

ベスト16で日本と相見える可能性はゼロではない

 謙虚で、無欲で、だがたしかな野望を持ったヤング・ライオンズには、何かを期待させる若さとエネルギーがある。たしかに、鉄壁とは言い難い守備の不安、エースのルーニーに代表される国際舞台での勝負弱さ、無敗で切り抜けたものの苦戦を強いられた欧州予選での出来など、不安要素を挙げればキリがない。

 大手ブックメーカーのオッズを見ても、イングランドは今なおイタリア、ウルグアイに次ぐグループ突破の3番手。これはC組でコロンビア、コートジボワールに次ぐ3番手と評される日本代表と同じ立ち位置だ。

 日本がグループリーグを突破した場合、ベスト16で相見えるグループがD組だが、現状で“3番手同士”がともに勝ち上がって対戦する可能性は決して高いとは言えない。それに、もし日本が実際に戦うなら、3−4で惜敗したコンフェデ杯のリベンジマッチとなるイタリア戦や、Jリーガーであるディエゴ・フォルランとの対決が見られるウルグアイ戦の方が“ストーリー”的な収まりもいいのかもしれない。

 それでも、イングランドを潜在的な対戦相手から完全に除外するのは少し待ってほしい。「ユーロ2016のために選手を選んだのではない。2014年のために選んだのだ」と胸を張るホジソンの言葉に嘘偽りはない。野心に満ちた若き獅子たちの中から“ワンダーボーイ”が飛び出せば、彼らはグループを、そして大会を一気にかき回す存在になるかもしれないのだから。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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