松岡修造が混戦模様の全仏OPを徹底解剖 運が味方すれば錦織に初Vのチャンスも
全仏オープンの魅力や大会の見どころを、松岡修造氏が語った 【スポーツナビ】
スポーツナビでは、今大会の魅力や見どころ、日本人選手の展望などについて、日本テニス協会強化副本部長で、今大会をWOWOWで解説する松岡修造氏に聞いた。
クレーの全仏 もっとも必要なのは体力
全仏オープンは本当におしゃれな大会です。“フランス”というものを、画面からも感じられると思います。また、全仏はグランドスラムで唯一、クレーコート(赤土)で行われます。そのため、普段よりボールがつながり、一発ではなかなか決まらないところが魅力です。クレーコートでは将棋やチェスのように、じわじわと追い詰めていくことが絶対に必要なんです。テニスに詳しくない方でも全仏を見れば、自分で考えて組み立てて、じわじわ追い込んでいく様子が分かると思います。
――全仏というクレーコートで勝つためのポイントは何ですか?
全仏は戦術・組み立て・体力の中でも、体力が一番必要な大会と言われています。ボールがなかなか決まらない分、走らなければいけないからです。1ポイント取ったら、けいれんするくらい走る、というのが5時間続くこともあります。男子で考えると、“クレーの王者”ラファエル・ナダル選手(スペイン)がもっとも忍耐力、体力、メンタルがあります。その中に技術という要素は入っていませんが、それでも、ずっと勝ち続けているわけです。
――ナダル選手は、前回を含めて過去8度の優勝を果たしています。今大会の上位争いはどうなると予想されますか?
もちろん、対ナダルで考える必要がありますし、クレーコートはナダル選手一番のアドバンテージです。でも、一時期よりも、「クレーコートでもナダルに勝てる」と考えて戦う選手が多くなってきていると思いますね。
――ナダル、ノバック・ジョコビッチ(セルビア)、ロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マレー(英国)のいわゆる“4強”以外で注目している選手はいますか?
トップ選手だったら全員じゃないでしょうか? 今は誰でも上位に入るチャンスはあると思います。こういう時代はなかなかないですね。世界ランキング20、30位以降になってくると、やはり差が大きくなりますが、今、錦織選手がいるトップ10前後は、本当にすぐにでもトップを倒せるような選手の集まりだと思います。
錦織、上位進出には運も必要
忍耐と体力です。僕は、技術は必要ないと思っています。彼はもう持っていますから。あとは運ですね。例えば、雨が降るとボールが重くなって、普段なら1球で決まるものが、3球くらい続けなければいけないことがあります。加えて寒さも出てきます。僕が見た限り、錦織選手はこういう状況は得意ではないので、天候が大事になります。また、トップ選手が途中で負けたりケガをしたりすると、(1月の全豪オープンを制した)スタニスラス・ワウリンカ選手(スイス)のように、優勝を狙うチャンスが出てきます。錦織選手は、技術とメンタルと体力で、もう十分優勝できるところにいます。ただ今は、勝つためには運が必要です。
――全仏は雨天が多いと言われていますが、実際はどうですか?
雨も多いですし、寒くなると本当に寒くなります。ボールが一気に飛ばなくなる感覚です。ハードや芝のコートは雨が降ったら中断しますが、クレーはある程度の雨なら続行するんですよ。それが一番嫌ですね。逆に天候がいい時は、どちらかというとハードコートよりも速い感じでボールが弾みます。
――そういった天気の変化を乗り越えるには、先ほどおっしゃったメンタルや対応力が鍵になりますね。
ただ単につなげていける選手が、クレーコートでは強い。でも、総合的に考えたら、やはり全てをそろえている選手のほうが強いに決まっています。もし、1セットマッチでグランドスラムをやったら、錦織選手は必ず勝つと思いますよ。彼は、戦略や想像力のすべてそろえていますから。でも、全仏では5セットを5時間という状況もあるので、最初から飛ばすと後が持ちません。最初からギアを全開にして最後までいけるのが、ナダル選手やジョコビッチ選手といったトップ選手です。