初完封で披露した田中将大の魅力 “不敗神話”は米国でも見逃せないものに
連敗ストッパーの役目を果たした“最後の砦”
メッツ戦でメジャー初完封。田中は“最後の砦”の役割を果たし、チームの連敗を止めた 【Getty Images】
5月15日(現地時間14日)にシティ・フィールドで行われたメッツ対ヤンキース。その中盤に「ニューヨーク・デイリーニューズ」紙の記者が発したそんなツイートが、すべてを物語っていたのだろう。
地元ベースボールファンの視線が集中する通称「サブウェイシリーズ」で、ヤンキースのエースと呼ばれるようになった田中将大はメジャー初完封。9回を散発の4安打、無四球、8奪三振と内容的にも文句の付けようがない。過去2日間で計21得点と好調だったメッツ打線を圧倒し、チームを4−0の勝利に導いた。
「私たちには勝利が必要だったし、長いイニングを投げて欲しかった。(田中は)ステップアップし、チームに必要なことをやってくれたんだ」
試合後、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督が安堵(あんど)の表情でそう語った理由も理解できる。この日に至るまでヤンキースは4連敗を喫し、しかもこの1カ月間でイバン・ノバ、マイケル・ピネダ、C.C.サバシアといった先発投手たちが故障者リスト入り。ほとんど雪崩現象と言ってもいい状態で、田中は“最後の砦”として初のサブウェイシリーズに臨んだのだった。
「(チームの連敗は)もちろん意識していたところです。このサブウェイシリーズも連敗(昨季から通算6連敗)が続いているのは分かっていたので、何とか自分が止めたいと思っていました」
田中本人もそう語り、“連敗ストッパー”の重圧を自らに課していたことを認めている。さまざまな状況、背景から考えて、渡米以来ではおそらく最も重要な舞台だった。そのゲームで本人が言うところの「一番良かった」という投球ができてしまうことが、この投手の魅力を象徴している。
さまざまなことが田中の味方になる
“負けない男”の神話に魅入られたかのように、主人公の敵役を務めたこの日のメッツは試合中に考えられないようなミスを連発した。
2回表にはヤンキースの8番打者ブライアン・ロバーツが放ったレフト前のライナーを、エリク・ヤングが不必要なダイブの末に後逸してヤンキースが先制。5回裏には田中からレフト前ヒットを放ったクリス・ヤングが、直後に中途半端なディレードスチールを試みてタッチアウト。7回表には2死三塁からデレク・ジーターが投手前にボテボテのゴロを放ったが、メッツの投手、捕手が意思の疎通を図れず、内野安打になってヤンキースに追加点が入った。
ゲーム中のさまざまなことが、“不敗神話”を持つ田中に味方していく。これまで相手に先制点を許してもチームは逆転してくれたし、今夜はニューヨーク最大の舞台で最高のパフォーマンスで魅せる勝負強さも披露してくれた。