最強王者メイウェザーの終わりの始まり!?=精彩を欠いたマイダナ戦は“衰え”なのか

杉浦大介

「ファンが喜ぶ試合だった」接戦は判定2−0

マイダナのアグレッシブかつラフなファイトに手を焼いたが、クリーンヒットで上回ったメイウェザー。判定2−0でデビューからの無敗を守った 【Getty Images】

 現役最強王者が大苦戦……無敗のまま5階級を制覇したフロイド・メイウェザーも37歳になったのだから、こんな日が来ること自体は驚きではない。しかし、決して高評価されたわけではないマルコス・マイダナに、これほどまでに手こずると考えた人はほとんどいなかったはずだ。

 5月3日にラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで行なわれたWBC、WBA世界ウェルター級王座統一戦で、WBC王者のメイウェザーがWBA王者マイダナに判定勝利で王座を統一。しかし、メイウェザーはマイダナのアグレッシブな前進とラフファイトに手を焼き、判定は2−0(117−111、116−112、114−114)という微妙なものだった。

「厳しいファイトだったけど、ファンが喜ぶ試合だったと思う。普段の僕は動いてアウトボクシングするけど、今夜はファンにエキサイティングな試合を供給したかったんだ」
 1万6268人の大観衆を湧かせた試合後、メイウェザーはリング上で激闘をそう振り返っている。

有効打の差で上回るも影を潜めたスピード

 一部のファンは判定にブーイングを送ったが、勝敗自体は異論のないものだった。ケンカのようなマイダナの突進を止め切るには至らなかったものの、ロープ際でもメイウェザーの被弾はごくわずか。中盤ラウンドにはリング中央で印象的なパンチを打ち込み、タフなマイダナがダメージを感じさせるシーンもあった。精力的に攻め、ラフ戦術も効果的に使い、最後の2ラウンドに再びペースを上げたマイダナの頑張りは見事ではあった。それでもクリーンヒットの差を考えれば、最終的にメイウェザーの明白な勝利は動かなかったはずだ。

 ただ……例えそうだったとしても、この日のメイウェザーが普段よりも精彩を欠いたことは否定できない。過去にもホセ・ルイス・カスティーヨ、ミゲール・コットといった選手たちが絶えずプレッシャーを欠けるスタイルでメイウェザーを苦戦させたが、マイダナにはその2人のような技術的下地はない。それゆえに試合前にはメイウェザーの圧勝を予想する声が圧倒的で、筆者もそのうちの1人だった。

 しかし、この日のメイウェザーは、本来の圧倒的なまでのスピードが影を潜めたまま。何より、ステップワークが以前ほどスムーズではなく、おかげでコーナー、ロープ際に長時間押し付けられる羽目になった。前記通り、メイウェザーは接近戦に応じたのは「ファンを喜ばせるため」だったと盛んに主張したが、信じるものはいまい。

「試合当日のウェイトは俺は148パウンドで、マイダナは165パウンドもあった」「俺はボクサーだけど、(ラフな)マイダナはWWEレスラーのようだった」「(第4ラウンドの右目上の)カットはバッティングによるもので、直後の2ラウンドはよく見えなかった」
 試合後の会見でのこれらの言葉も、少々言い訳がましく聴こえてならなかった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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