「最後にイチローは笑っている」 挑戦と進化を続ける40歳を田口壮氏が解説
40歳で迎えた今季も進化し続けているイチロー。打率3割7分3厘と途中出場が多い状況でも結果を残している 【写真は共同】
スポーツナビでは1995年、96年にオリックスでパ・リーグ連覇、日本一に貢献し、メジャー移籍後はユーティリティープレーヤーとして、カージナルス、フィリーズで2度の世界一に輝いた田口壮氏にインタビューを行い、日本人野手の現状、特にかつての盟友イチローについて語ってもらった。(取材日:4月26日)
野手の活躍には幼少期からの指導に変化が必要
仕方がないという状況ではあります。イチロー選手はヤンキースという他から戦力を集めているチームにいますから、なかなか出してもらえません。ただ、彼は(試合に)出れば必ず打っていますし、常に準備を怠らない選手です。間が空いてゲームに出て、結果を残すというのは難しいことです。僕も経験をしていますが、それができるというのは超一流である証でしょう。そういう意味では、シーズン最後にイチロー選手は笑っている気がしています。
また、青木選手は打率が上がっていませんが、トータルすれば打率は残せる選手ですし、全く心配していません。見るのが楽しみです。
――以前、田口さんは日本人野手の課題として、天然芝への適応の問題などを挙げていました。これらを克服するすべはありますか?
慣れしかないです。それと周りの状況を見ながら、何ができるのかということを試すことが大事です。中島選手、田中選手、川崎選手もマイナーに落ちています。メジャーに行ってから(やり方を)変えるというのは難しいと思いますし、時間もかかります。時間がかかることによって、評価されない部分が多くなります。「彼らがメジャーでプレーする実力がないか?」と問われると、決してそうではないと僕は思います。ただ、育ってきた環境があまりにも違うので、そこを切り替えていくというのは難しい。日本の野手が米国で活躍しようとするのであれば、もともとの日本の野球を変えていかないと、追いつかないです。
環境を変えることによって、全く守り方も変わってきますし、「いかに効率的に守るか」というのも考えていかないといけません。「自分の体を上手に使って無駄な動きを無くしていくか」といったところを小さいうちから教えていかないとメジャーで活躍する海外の野手には追いつけません。
また、現状では日本人野手がパワーとスピードで対抗していくのは難しいように思います。これは骨格と筋肉の問題になってきますから、これから何百年か先、完全な肉食にして欧米文化を取り入れて、血が混ざっていけば……という話になってきますね。
――バッティングで必要なことは?
(ボールに対して)最短距離でバットを出すかというところと、(いかに)ボールを長く見るかというところが重要です。それができれば、今の日本人でも十分通用しますし、日本のプロ野球界を見ても通用する選手はたくさんいると思っています。
飽くなき挑戦と進化を続ける40歳・イチロー
(今年は)打ち方を変えています。左足のつま先を去年だけ(内側に)入れていましたが、今年はやめました。左肩が早く(前に)出ていくのを防いでいます。そのことによってパワーロスが少なくなって、ちゃんとアウトコースの球も叩けるようになりましたし、さらに(ボールを)呼び込んで打てるようになっています。
――そのバッティング改造によって、(5月7日時点で)3割7分を超える打率を記録できているということでしょうか?
改造というよりも、彼は常に新しいものを求めています。いろいろなものを試しては戻していく。これは経験した上で戻すわけですから、その意味でもイチロー選手は常に進化し、新しいものを求めている表れだと思います。まだまだ上を目指しているのでしょう。
――イチロー選手は現状、第4、第5の外野手としてプレーしていますが、今後レギュラーとして常時出場できるタイミングはいつごろと予想しますか?
断言できませんが、総合的に見て、彼の実力は他の選手に劣っているとは思いません。それに加えて、一番健康であることは間違いないです。(他の選手がケガをした時が)イチロー選手にとってチャンスになります。全員が健康な状態では、ジョー・ジラルディ監督の使い方を見ていると、先発ではなかなか出られないのは分かります。ただ、ケガ人が出たところで、一気にレギュラーを取っちゃうだろうなという気はしています。