CL決勝は“アトレティコ”対決!? レアルの選択するスタイルが勝敗の鍵に

西部謙司

レアルの戦術は“アトレティコ”流

クリスティアーノ・ロナウド(写真)らの得点でCL決勝へと勝ち進んだレアル 【Getty Images】

 4月に入って流れは急変した。
 チャンピオンズリーグ(CL)ベスト4決定が9日、アトレティコ・マドリーはFCバルセロナを破っている。レアル・マドリーのカルロ・アンチェロッティ監督は、おそらくこの時点で確信を持ったのではないか。

 16日、スペイン国王杯決勝でバルセロナと対戦したレアルは“アトレティコ”に変身していた。
 クリスティアーノ・ロナウドを負傷で欠いたこのゲームで、アンチェロッティ監督はガレス・ベイルとカリム・ベンゼマの2トップによる4−4−2を選択している。しかし、普通の4−4−2ではない。アトレティコの4−4−2だった。
 従来の4−4−2と違うのは、2トップの守り方である。相手のセンターバック(CB)とボランチの間にポジションをとるのは同じだが、ずっとボランチに近い位置まで戻るのだ。これによって4−4−2の守備ブロックは8人ではなく、10人で構成されることになった。アトレティコがバージョンアップした新しい4−4−2である。

 かつての4−4−2が激減し、4−2−3−1が主流になった理由の1つが守備ブロックの人数不足だった。純粋なストライカー2人では、8人の守備ブロックの手前のエリアを守れない。そこで1人はそのエリアを守れる選手を使った。守備ブロックの構成人数を8人から9人に増やしたわけだ。
 しかし、2トップが守備ブロックに加わるなら人数は10人。守備はより強固になり、2トップによるカウンターは1トップよりもパワーアップできる。
 バルセロナに強いアトレティコの戦術を採用したレアルは、国王杯で2−1とバルサを下す。今季リーグ戦では1−2、3−4と打ち負けていた宿敵に初めて勝つことができた。

バイエルンでも破れなかったレアルの壁

グアルディオラ監督の下、『進化したバルセロナ』を見せたバイエルンだったが、レアルの前に屈した 【Getty Images】

 CL準決勝の対戦相手に決まったバイエルン・ミュンヘンは“進化したバルセロナ”だった。

 ジョセップ・グアルディオラ監督を迎えてプレースタイルを一新したバイエルンは、戦術的に今季最注目のチームである。
 グアルディオラ監督は知り尽くしているバルセロナの戦術をバイエルンに導入した。それでバルサより強力なチームを作れる成算があったからだろう。同じ成分を違う型に流し込むと、似ているけれども違うものになる。バイエルンはより欠点のないバルサになった。

 グアルディオラは選手の特徴を見極めたうえで、ポジションを動かしてチームの機能性を変えるのがうまい。ボールを回しながらフォーメーションを変化させ、サイドバック(SB)を攻撃的MFに上げたり、1トップを2トップに変化させるなど、多彩な采配をみせている。これも選手層が厚く、しかも異なるタイプのいるバイエルンだからこそ可能だった。比較的選手層が薄く、バリエーションも限られていたバルサにはなかったバイエルンの強みである。

 ただ、バイエルンにも弱点はあった。ジェローム・ボアテングとダンテのCBはややスピードに欠けている。高さや強さは十分な2人だが、スピード対応に関してはハビエル・マスチェラーノのいるバルサのほうが優れているかもしれない。
 国王杯でバルサのパスワークを封じ、ベンゼマとベイルの爆発的なカウンターで2点をもぎとったレアルにとって、バイエルン戦で戦術を変更する理由は見当たらなかった。レアルは“アトレティコ”のままバイエルンも粉砕する。

 バルサの進化版であるはずのバイエルンのセットプレー対応が、バルサ並に弱体化していたのは意外だったが、進化したアトレティコともいえるレアルが、バルサとバイエルンを連破し、戦術の流れが今季終盤で“アトレティコ”に集約された感があった。

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著者プロフィール

1962年9月27日、東京都出身。サッカー専門誌記者を経て2002年よりフリーランス。近著は『フットボール代表 プレースタイル図鑑』(カンゼン) 『Jリーグ新戦術レポート2022』(ELGOLAZO BOOKS)。タグマにてWEBマガジン『犬の生活SUPER』を展開中

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