松坂大輔に蘇りつつある球威 「最愛ではない」リリーフで再起なるか

杉浦大介

チームで最も上質な投球を続ける松坂

リリーフとしてコリンズ監督ら首脳陣の信頼を増している松坂に、クローザーの可能性も浮上している 【Getty Images】

「リリーフの役割に慣れたくはないですけどね……」

 4月中旬にメジャー昇格し、メッツのブルペンの一角として起用され始めたころ、松坂大輔はそんな言葉を漏らしていた。
 日本、メジャーの先発として長くやってきた誇りが如実に感じられ、今でも基本的にその気持ちは変わってないはずだ。しかし、本人の当初の思いに反して、松坂が先発ローテーション入りに近づいている気配はない。

 とは言っても不調なわけではなく、救援投手として4月26日(日本時間27日)まで4戦連続無安打無失点で、防御率1.35。24日(同25日)のカージナルス戦では9回に登板してメジャー初セーブを挙げるなど、テリー・コリンズ監督をはじめとする首脳陣の信頼は厚くなるばかりのように見える。

「良い経験、良い勉強をさせてもらっていると思います」

 カージナルス戦後にそう語っていたのをはじめ、最近は松坂のコメントからも徐々にリリーフという役割への軟化の気配が見える。
 自分に言い聞かせているのか、あるいは本当にやりがいを感じ始めたのか。
 おそらくは前者が大きいだろうが、しかし、たとえ意中の相手ではなくとも、好意を持たれれば人間はうれしいもの。ナ・リーグ東地区2位と予想外の好スタートを切ったチームの中で、短期間で重要な立場になったことに悪い気はしていないはずだ。

「自分は準備に時間がかかるタイプなので、リリーフには向いていないと思っていた。しかし、意外と早く(準備が)できるので、今のところはそこまで苦にならずにやれています。ブルペンで投げることに関してはまだ手応えはないので、たまたま結果が出ているだけの感じもしますけど。チームの投手陣の調子が良いですし、それでいいんじゃないですかね」

 本人の謙虚な言葉と裏腹に、現在のメッツのブルペンでは松坂が最も上質なピッチングを続けている。カイル・ファーンズワース、ホセ・バルベルデといった実績のあるベテランを差し置いて、近い将来にクローザーに指名されてももうまったく驚くべきではない。

変化球を生かす真っすぐの力

 11年に受けたトミー・ジョン手術から復帰以降は「変化球投手に転向か」と盛んに言われた松坂だが、個人的な意見を言えば、ここまで好結果が出てる要因はやはり速球系に勢いが戻りかけていることだと思う。
 力を入れた際の最速92マイル(148キロ)の真っすぐには力がある。少し抑え気味に投げた際の80マイル台後半(140キロ前半)の球も、キレ自体は悪くない。それらがあるからこそ、カットボール、スライダー、カーブといった変化球も生きてくる。

「(真っすぐは)昨日よりは良かったかと。カットボールが安定して状態が良いので、短いイニングを投げるときはカットと真っすぐの組み立てが多くなるんじゃないかなと思います」

 西武時代の00年5月9日以来のセーブを挙げたカージナルス戦後、真っすぐについて尋ねると、控えめながらそんな答えが返ってきた。こうして良いころの球威が蘇りつつあることと、今季6回2/3で10奪三振と奪三振率が高いことは偶然ではないはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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