藤田の16勝目を決めたキャディーの言葉 土壇場で確信した“守り”の決断

GDO

相手の根負けを誘いV

キャディー(左)の言葉で、守りに徹し16勝目を飾った藤田寛之 【写真は共同】

 勝負を決めた「守りのジャッジ」に2人は胸を張った。24日〜27日に兵庫県・山の原ゴルフクラブで行われた国内男子ツアー「つるやオープンゴルフトーナメント」。藤田寛之はツアーきっての参謀の後押しを受け、最終日の大混戦、そしてパク・サンヒョン(韓国)とのプレーオフを勝ち抜いて今季初勝利を飾った。

 昨季までに通算15勝を挙げてきた藤田と、数々の名選手のキャディーバッグを担ぎ、通算20勝をアシストしてきた清水重憲キャディー。互いのキャリアで初めてタッグを組んだ今大会のハイライトは「73ホール目」にあった。

 最終日、15番からの2連続バーディーで通算13アンダーとして、先にホールアウトしていたパクに並んだ藤田。17番(パー5)、ドライバーでのティーショットは狙いよりも右へとそれ、セミラフとラフの境目に転がった。

 残り210ヤード。ユーティリティーで池越えの2オンを狙うべきか、狙わざるべきか。グリーン右手前のバンカーもターゲットとしてはあり得た。バーディー奪取なら一気に単独首位に躍り出る場面。清水キャディーはささやいた。

「最後に楽しみはとっておきましょう」――。

「ナイスショットをしてバンカーに入れるところだった。それではあまり意味がない」(清水キャディー)。藤田はアプローチウェッジを握り、フェアウエーに刻んで2パットで確実にパーをセーブした。正規の72ホール目、そしてプレーオフ1ホール目でプレーした18番もパーを並べて、パクの根負けを誘った。

「攻めて勝つのはカッコいいが、リスクを負いすぎてはいけない。“守りの藤田”で勝った」と藤田。土壇場での決断に確信を持てたのは、隣から送られたアドバイスによるものに他ならない。

出会いと力を媒介するキャディー

 今季は主に女子ツアーでイ・ボミ(韓国)をサポートする清水キャディーは、かつて谷口徹、上田桃子の両選手を支え、2007年には2人が賞金王&賞金女王に輝くというキャディー業における偉業を達成。今季、エースキャディーが決まらない12年の賞金王との急造タッグについて「僕は今週、藤田さんに勉強させてもらおうと思って担いだ」という。

 清水キャディーは藤田の強さについて「グリーン上で勝負をするという意味で、谷口さんと同じタイプだと思う」とした上で、その“変わらない”強さに言及した。

「普段からラウンド中までリズムがまったく崩れない。朝からのルーティンも変わらない。アプローチ、パターの練習をやって、トイレに。それからショットの練習……いつも1時間をちょっと切る前から練習が始まる。優勝争いとなると、(他選手は)少し早く出てきたくなるものなんですが……」

 今後、2人がタッグを組む予定は5月の「関西オープン」。注目を再び集めることになるはずだ。

 ちなみに、今週をオープンウィークとしたイ・ボミはこの初日に会場を訪れ、藤田にパットのワンポイントアドバイスをもらったとか。男女のツアーを行き来して、プロ同士の出会いと力を媒介するプロキャディー。二人三脚の輪の広がりと絆は、ゴルフ界にとって欠くことのできないものだ。

(文・桂川洋一)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

GDO

国内外のトーナメント速報、最新ギア情報、レッスン動画など、ゴルフ情報をいち早く配信する専門サイト。米PGAツアーや欧州ツアーと提携し、各ツアーの日本語公式ページも運営する。1900コース以上のゴルフ場予約や、日本最大級の品揃えを誇るオンラインショップも展開し、ワンストップでゴルフファンを満足させる。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント