ハープとは“真逆”の個性で狙う二冠目=川田将雅 皐月賞直前インタビュー
桜花賞に続き皐月賞でも有力馬トゥザワールドに騎乗する川田、その胸のうちを探る 【netkeiba.com】
(取材・文/不破由妃子)
デビュー前からクラシックの感触
ああ、こういう馬がクラシックに向かっていくんだろうな……川田にはデビュー前から確かな手応えがあった 【netkeiba.com】
その強味は、皐月賞のトゥザワールドにもある。中山2000m、そしてその先にある東京2400mという舞台を見据え、新馬戦から前走の弥生賞まで、トゥザワールドが秘める可能性をあらゆる競馬で探ってきた。
「ハープスターとは真逆の馬です」とは川田。はたしてその真意は、ここまで積み重ねてきた5戦の内容にある。
「デビュー前に跨ったときから、“ああ、こういう馬がクラシックに向かっていくんだろうな”という感触はありました。それだけの背中をしていましたし、それだけの雰囲気もありました」
父キングカメハメハ、母トゥザヴィクトリー。全兄トゥザグローリーの活躍を引き合いに出すまでもなく、競馬ファンに絶大な訴求力を持つ良血馬であり、川田も素直に「これだけの血統馬を新馬から任せていただけていることが、本当にうれしいです」と語る。
デビューは昨年の9月28日、阪神芝1800m。血統もさることながら、508キロの雄大な馬体が目を引き、単勝1.9倍の支持も納得だった。
「祐一さんが乗っていた藤原英昭厩舎のドラゴンストリート(2番人気5着)が相手だと思っていたんですが、見事にバンドワゴンにちぎられましたね(6馬身)。あのレースは、純粋に勝ち馬が強かったです。ただ、ちぎられたとはいえ、初めての競馬だったことを思えば、最後はしっかり脚を使ってくれましたし、悲観するような内容ではありませんでした。素質は十分に感じましたから、2戦目の未勝利戦は、とにかく無事に勝ち上がろうと。初戦では多少、外に逃げる面を見せましたが、2戦目はその点も上手に走ってくれましたし、改めて能力の高さを感じたレースでしたね」
初戦こそ、逃げたバンドワゴン(皐月賞は脚部不安で回避)の後塵を拝したものの、続く京都芝1800mの未勝利戦は、中団追走から直線はアッサリ抜け出し、最後は流す余裕を見せての快勝。計時した上がりは、軽く仕掛けただけでメンバー中最速の34秒4。負けた馬には気の毒だが、これが“能力の違い”というものなのだろう。
高い操縦性で勝利を重ねる
川田はトゥザワールドに関して「ハープスターとは真逆」と語る 【netkeiba.com】
「オーシャンヒーローを意識したレースだったので、道中はあの馬をマークして。直線もオーシャンがどれだけ伸びるかわからなかったので、早めに捕まえにいって、あとは相手の手応えを見ながら、勝てるぶんだけ脚を使った感じです。終始楽な競馬でしたが、馬ごみでも上手に走ってくれましたし、とても中身のある競馬でしたね」
4戦目の若駒Sは、一転して中団に控える競馬。3コーナー過ぎからジワッと動き出し、抜群の手応えで4コーナーを回ると、実にあっさりと突き抜けてみせた。2着ミヤビジャスパーとの差はわずかコンマ2秒だが、このときもゴール前は抑える余裕があった。
「直線は、軽く勢いをつけただけでしたね。スタートが上手だし、この子の場合は道中もとても操縦がしやすい。前の位置がほしいなと思えば、楽にポジションを取りに行けるし、ペースが速いと読めばスッと控えることができる。賢くて、非常に器用な子です。同じ“賢い”でも、自分の意思で動かないハープスターとは、ある意味、真逆ですね(笑)」
普段もきわめて扱いやすい馬だというトゥザワールド。この点も、わがまま放題に振る舞うハープスターとは真逆である。
「本当におっとりしていて、賢くていい子です。普段からどっしりと構えていて、堂々としているんですよ。“堂々としている”という点では、ハープスターも同じですね。“私がハープスターよ!”という感じで、“堂々と”暴れますから(笑)」