田中将大がNYのマウンドで誇示した力 現金な住民が7回に送った歓声の意味
“フィーバー”と呼ぶにはほど遠く…
本拠地ヤンキー・スタジアムで初先発した田中。立ち上がりに3失点したものの7回3失点と、辛辣な地元記者も及第点を与える結果にまとめてみせた 【Getty Images】
ヤンキー・スタジアムで初先発を迎えた田中将大が、2回表にオリオールズの伏兵ジョナサン・スクープに豪快な3点本塁打を打たれた直後のこと――。笑顔を浮かべた顔なじみの地元記者に、そんな風に声を掛けられた。
メジャー2度目の登板となった現地4月9日(日本時間10日)のオリオールズ戦で、田中は2回までに本塁打を含む4安打を許し3失点。野手の正面を突いた鋭い打球も多く、この時点では厳しい本拠地デビューとなりそうな予感も漂っていた。ニューヨークの記者たちも、皮肉混じりの記事でも書こうと手ぐすね引いていたかもしれない。
夢と大志を抱いた鳴り物入りのルーキーは、ジャンルを問わず、この街には年がら年中やって来る。いちいち色めき立ってはきりがないし、十分な成績を残すまで、必要以上のスター扱いはしてくれない。
この日の公式観客数は3万9412人と発表されたが、スタンドは空席だらけ。一部のメディアが注目度を煽っても、実際には“フィーバー”と呼ぶにはほど遠かった。そんなスタジアムの空気は、マサヒロ・タナカがまだ“ニューヨークの呼び物”にはなり切っていない現実を物語っていた。
地元記者も及第点を与えるだろう結果
3〜7回まではヒットは3本のみで、昨季はメジャー5位の得点力を誇ったオリオールズ打線を零封。最終的には7回を7安打3失点、10奪三振、1四球と、辛辣(しんらつ)な地元記者も及第点を与えるだろう結果にまとめてみせた。2戦連続の厳しい立ち上がりにもかかわらず、その両戦でクオリティスタート(先発投手が6イニング以上を投げ自責点3以内に抑えたこと)である。
「投げミスが多かったんで、ピッチングフォームの中で修正を図っていって、最後の方は形になっていったかなと」
試合後、田中本人も自身のアジャストメントについてそう言及していた。口で言うのは簡単でも、メジャー2試合目、しかも初めて立ったヤンキー・スタジアムのマウンドで、それを行っていくのは簡単なことではない。最終的にヤンキースが4対5と競り負けたゲームの中でも、3回以降の立ち直りを見て、田中に自信を深めたファン、関係者は多かったはずだ。