歴然としていたバイエルンとの実力差 輝きを放った香川は終盤戦のキーマンに

河治良幸

歓喜の先制点直後に襲った悪夢

先制こそしたものの、ユナイテッドはバイエルンに実力差を見せつけられ完敗。CLでの挑戦はベスト8で幕を閉じた 【Getty Images】

 現地時間4月9日に行われた欧州チャンピオンズリーグ。ホームの第2レグを3−1で勝利し、合計スコア4−2とした前回王者のバイエルン・ミュンヘンがマンチェスター・ユナイテッドを破り、チェルシー、レアル・マドリー、アトレティコ・マドリーとともにベスト4進出を決めた。

 終わってみればやはり実力差は歴然であり、終盤はそれがそのまま結果となって表れた格好だ。それにしても、粘り強く守りながら好機をうかがう戦い方がはまっていた後半途中までの展開を考えれば、ユナイテッドにとってはもったいない試合だった。「得点の直後に失点してはいけないことを、学生の時代から教わっているはずだ」とモイーズ監督も悔しがった時間帯は57〜58分。右サイドでのボールの奪い合いを制し、ライン際を突破したバレンシアのクロスから、左を絶妙なタイミングで駆け上がってきたエヴラが左足の豪快なハーフボレーで先制点を決めた。歓喜の輪を作ったユナイテッドを“悪夢”が襲ったのは1分後だった。

 バイエルンはDFのダンテを起点に左サイドのライン際でリベリーがボールを持つと、前方のスペースに流れたゲッツェに素早く縦パスを通す。ユナイテッドはバレンシア、フレッチャー、ジョーンズのトライアングルをあっさりと破られた形だが、そこからフレッチャーとジョーンズのリカバリーが重なったところから、ゲッツェのバックパスで前を向いたリベリーがダイレクトで左足クロスを上げる。するとニアのミュラーがスモーリング、ヴィディッチと競り合う裏で、マンジュキッチがエヴラよりいち早くボールに反応してダイビングヘッドで合わせた。GKのデ・ヘアもとっさに跳んで長い腕を伸ばしたが、すらし気味の弾道はゴール右隅に吸い込まれた。

3つの大きな問題が重なった失点

 この失点は3つの大きな問題が重なったところをバイエルンに突かれて喫したものだ。1つ目はカウンターの局面でないにもかかわらず、あっさりとサイドを破られてしまったことだ。バレンシアは最初、中に絞り気味のポジションを取った左サイドバックのアラバをチェックしていたが、リベリーにボールが出ると分かった時点で素早くアプローチする必要があった。結局、リベリーに前を向かれたことでジョーンズが対応を強いられ、背後でゲッツェをフリーに。右に流れて対応したフレッチャーも判断がはっきりせず、中途半端なポジショニングでリベリーにもゲッツェにもプレッシャーを掛けられなかった。

 2つ目は、ゲッツェに深い位置まで持ち運ばれたところでフレッチャーが付くまでは良かったが、ジョーンズがさらに縦から挟みに行ったことで再びリベリーがフリーでパスを受けられる状況になったこと。そこにバレンシアがはっきり付くこともなく、そのまま絶好のタイミングでクロスを上げられてしまった。しかも、この局面でルーニーとウェルベックの2人が前に残っており、戻った香川のポジショニングもキャリックと重なってしまった。

 3つ目はゴールを決めたマンジュキッチのケア。ミュラーが構えるニアに2人のセンターバックが行ってしまい、左サイドバックのエヴラが第一のターゲットであるマンジュキッチに対応する“ミスマッチ”ができてしまったわけだが、ペナルティーエリア内のさらにファーサイドでロッベンが余っており、エヴラは同時に2人を見るような形になってしまっていた。なぜそうなったかと言うと、直前にボールを持っていたゲッツェが中にドリブルしてくる可能性を想定したスモーリングがニアを切りに行ったことで、その少し後ろにいたミュラーをもう1人のセンターバックであるヴィディッチが見る必要に迫られたのだ。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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