田中将大がつかんだ勝利以上の大きな収穫=吉井理人氏がメジャー初登板を解説
メジャー初白星を初登板で達成した田中の投球について、メッツなどで活躍した吉井氏が解説した 【写真は共同】
スポーツナビでは、現役時代、ニューヨーク・メッツで1シーズン12勝(99年)を挙げるなど日米で活躍した吉井理人氏に、田中のメジャー初登板試合を特別解説してもらった。
気になった初回と2回の配球
初回、緊張していたとは思います。ただ、投球を見る限りは緊張が悪い影響を及ぼしていたように映りませんでした。カブレラ選手に高めに浮いた変化球を右中間スタンドに運ばれましたが、ストレート狙いだったカブレラ選手に対し半速球がちょうどバットのヘッドが回りやすい高さに入ってきた、というだけだと思います。失投と言えば失投ですね。
初回、2回と一番気になったのは、配球です。変化球中心の組み立てをキャッチャーのマキャンがしていましたが、こういったピッチングは田中投手のピッチングではないですよね。プロ入り1年目は変化球中心の組み立てというのも見ましたが、少なくとも日本で、楽天のエースとして投げていた田中投手が立ち上がりに変化球中心のピッチングをしたところは見たことがないですね。メジャーデビュー戦というよりも今季初登板ということから、「得点を与えたくない、きちんと立ち上がりたい」という気持ちが強く出たのか、ランナーがいない状態でしたが、ピンチを背負っているかのような配球でした。
しかし、これはキャッチャーの配球かもしれないですね。こういったピッチングをすると、どんなピッチャーでも窮屈になっていくので、コントロールミスはしやくなります。
2回が終わったところで、マキャンとベンチで話し合っていましたね。これは推測ですが、私には田中投手がマキャンに「もっとファストボール系を投げさせてほしい」と言っていたように見えたんです。だから、3イニング目からファストボール系の割合が増えて、球数も減っていきましたよね。結果論ですが、初回、2回のピッチングを続けていたら、球数としても7イニングも投げ切れなかったと思うんですよね。3回以降、ピッチングの組み立てを変えてからは“田中投手らしい”ピッチングでしたね。
田中投手の得意球であるスプリットやスライダーを生かすためにもストレートを交ぜていかなければなりません。どんなにコントロールが良いピッチャーであっても、スプリットやスライダーはコントロールミスが出やすい球種です。コントロールミスが出たとき、バッターに痛打されないようにするためにもストレートは必要です。
メジャーだけでなく、日本でもそうなんですが、投球の半分はファストボール系を投げないと、長いイニングを投げようと思ったら、ピッチングにならないんです。田中投手もこのことは分かっていたと思いますが、キャッチャーへの遠慮があったのか、田中投手自身も立ち上がりは無失点でいきたいという気持ちが勝ったのか、得意のスプリットが多い組み立てになっていましたよね。
ただ、今日のピッチングで次回以降の配球の良いヒントになったんじゃないでしょうか。