別格の存在感を示す次世代エース南野拓実 リオ世代唯一のブラジル行きを狙える逸材
「サプライズ選出」でA代表入りも目指す
2011年のU−17W杯(メキシコ)では背番号9を背負い、ベスト8入りに貢献した 【写真:MEXSPORT/アフロ】
本人も「サプライズ選出」を本気で意識して、この練習試合に挑んだ。
「サッカー選手をやってる以上、誰もが夢だと思ってるだろうし、狙う権利もある。自分はつねにA代表に選ばれてW杯に出ることを意識してます。そのためには結果を出すことだと思うんで、今日は点を取れたことに関しては自信になると思います」と南野は素直な思いを吐露している。
彼がW杯に強い憧れを抱いたのは、98年フランス大会がきっかけだった。ジネディーヌ・ジダン率いるフランス代表が優勝したこの大会のビデオを幼い頃から擦り切れるほど見て、脳裏に焼き付けたという。「いつか世界の大舞台に立つ」という大きな夢を抱いて、南野はゼッセル熊取FCからC大阪U−15、U−18を経て、現在の位置まで一目散に駆け上がってきた。2010年AFC・U−16選手権(ウズベキスタン)で5得点を挙げて得点王に輝いたのも、2011年U−17W杯で背番号9を背負ってベスト8入りに貢献したのもすべてその過程だった。
J1での得点と活躍がブラジル行き最後のハードル
実際、世界に視野を広げれば、南野世代が何人もA代表入りしている。イングランドでは19歳のラヒーム・スターリング(リバプール)が3月5日のデンマーク戦(ロンドン)でマン・オブ・ザ・マッチに輝き、ドイツでも20歳になったばかりのマティアス・ギンター(フライブルク)が同日のチリ戦(シュツットガルト)でAマッチデビューを飾っている。
翻って日本を見ると、昨年の東アジアカップ(韓国)以降、90年生まれの柿谷や山口、大迫勇也(1860ミュンヘン)らがようやく代表定着を果たしつつあるが、彼らロンドン五輪世代はもはや若手とは言えない。南野のポジションである2列目は本田圭佑(ミラン)、香川、岡崎慎司(マインツ)という不動の3人に加え、アジア予選で貢献した清武弘嗣(ニュルンベルク)やドリブラーの齋藤学(横浜FM)らがいて、非常に狭き門なのは間違いない。
実績重視のザック監督が10代選手を抜擢する可能性はもちろん低いだろう。それでもブラジルで大躍進を遂げたいなら、リオデジャネイロ五輪世代の台頭という新たな刺激があってもいいのではないか。
2週間後の4月7〜9日には、5月上旬に予定されるブラジル本大会メンバー発表前最後の国内合宿が首都圏で行われる。南野がそこに呼ばれれば、長年の夢へ一歩近づくことになる。
「4月の国内合宿入れそうな感じ? それは監督が選ぶことなんで……。自分に残された時間は少ないけど、リーグ戦とかACLでできることを最大限やっていきたいと思います」と彼は慎重な物言いを崩さなかったが、若者特有のギラギラした野心は垣間見せていた。
今週末の29日には、J1第5節、アルビレックス新潟とのホームゲームが待っている。今季ACLでは2得点しているものの、J1では現時点でノーゴールの南野にとって、この一戦での得点はA代表合宿招集に直結するといっても過言ではない。U−21代表戦で見せた傑出した決定力を維持し、目の前のハードルをキッチリとクリアしてほしいものだ。
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