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イタリア人監督の下で覚醒目指すFC東京
『規制と自由』を取り入れ、中位脱却へ

暗鬱な空気が流れても日々の積み重ねを淡々と

今季からFC東京を率いることになったイタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督。
今季からFC東京を率いることになったイタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督。【写真:アフロ】

 開幕戦の高揚感とはうって変わり、同じ引き分けでも暗鬱たる空気が垂れ込めたJ1第2節対ヴァンフォーレ甲府戦。その後のオフから空けて新しい週の初日となった3月11日、FC東京は戦術練習に長い時間を費やした。


 4−1−2−3の「4−1−2」で相手の動きを止め、ウラへのボールを追い、パスをカット、奪い、あるいはそもそも長いボールを入れさせない、クサビのパスを通させない、という守備に重きが置かれていた。

「ディフェンス面においてはより改善すべき点があったので、今日はしっかりと練習をしました。オフェンス面では2点目、3点目を獲って試合を終わらせることをテーマに掲げてやっていきたい」


 イタリアのティフォージ(熱狂的なファン)ほど過激ではないにせよ、第2節の出来の悪さから周囲のプレッシャーは感じていたはずだが、そんな時でも淡々となすべき仕事を続けていた。それが今季からFC東京を指揮することになったマッシモ・フィッカデンティ監督の日常だ。


 1月19日、FC東京が勝つためにいちばん植え付けたいものは何かを問われたフィッカデンティ監督はこう答えている。

「やはり重要な結果を残すためには、日々の積み重ねが大事です。それと同時にスタッフであったり選手一人ひとりのしっかりした仕事が結果につながる」


 土曜日の試合を迎えた時、急に照明のスイッチを入れるように、いきなりすばらしいプレーができるわけではない。常に日々の練習が大切だ――そう選手に言い続けているのだという。


 初めてクラブハウスに姿をあらわした1月15日も「FC東京のような中位のチームをより上位へとステップアップさせる時に、どういう心構えが必要か」と問うと「ほんとうにその目標を達成するためには、チームが一丸となってやっていく必要がある。なによりも、一日一日の積み重ねが、最終的に結果につながると確信しています」と答えた。信念にブレはない。


 当たり前のことだとは言っても、それが長年のプロヴィンチア(地方の中小クラブ)生活から醸し出されるものなら、相応の重みはある。

10−11シーズンにチェゼーナを率いミランを撃破

 今シーズン、期限付き移籍から復帰したMF羽生直剛はフィッカデンティ監督のパーソナリティを次のように語っている。

「あまり感情を外に出さない。ポーカーフェイスというか。自分の信念を貫くという意味では、サッカーに関してほんとうにまじめなんだなと思います。サッカーを戦いと捉える厳しさがある」


『サッカーは戦い』。残留争いを繰り返し、下位のクラブを指揮して上位に立ち向かわなければならない宿命を負えばこその必然か。


 フィッカデンティは現役時代、メッシーナ、エラス・ベローナなど、そのほとんどをセリエBから下のカテゴリーで過ごした。

 指導歴の始まりはセリエC2のUSフィオレンツォラ1922から。セリエC1のUSアヴェッリーノとピストイエーゼを経てエラス・ベローナにてセリエBに初挑戦。そして2007年、当時セリエAだったレッジーナの監督に就任するが、リーグ戦わずか10試合で解雇の憂き目に遭っている。


 華々しいシーズンはその後にやってきた。降格危機に陥っていたピアチェンツァをセリエBに残留させると、フィッカデンティは昇格したチェゼーナの監督としてセリエAに舞い戻った。

「イタリアにおける指導歴のうち、もっとも印象に残った出来事をひとつ挙げるとすれば、チェゼーナを指揮している時のACミランとの試合ですね。セリエAにデビューしたばかりの選手がたくさんいる中で、あれほど一流の選手がそろうミランに勝利したことは、忘れがたい経験です」


 2010−11シーズンのセリエA。開幕戦でローマと引き分けたチェゼーナはホームにミランを迎え、前半45分間に挙げたエリオン・ボグダニとエマヌエレ・ジャッケリーニのゴールを守りきり、2−0で勝った。

 ボグダニ、スティーヴン・アッピアー、ジュゼッペ・コルッチ、マクシミリアーノ・ペジェグリーノ、フランチェスコ・アントニオーリといったセリエA経験者がいたものの、未経験のジャッケリーニ、エセキエル・スケロット、マルコ・パローロ、ルカ・チェッカレッリに加え、イタリア初見参の長友佑都、スティーブ・フォン・ベルゲンを加えると過半数がフレッシュな顔ぶれだった。

武藤、三田ら若い力を使い中位脱却へ

若い武藤(写真右)や三田などを積極的に使い、チームに勢いをもたらす
若い武藤(写真右)や三田などを積極的に使い、チームに勢いをもたらす【写真:アフロ】

 この成功体験が根底にあるのか、今シーズンのFC東京はJ1での経験が浅い若手選手が重用される傾向が目立つ。

 昨シーズン後半戦にはほとんどチャンスらしいチャンスを与えてもらえなかった長身ボランチのMF野澤英之は、アンカーのサブとして開幕から2試合続けてベンチ入りを果たし、第1節ではわずか2分間ながら途中出場した。

 先発に眼を向ければ、MF米本拓司の故障による離脱の影響もあったが、インサイドハーフでMF三田啓貴、ウイングでFW武藤嘉紀、敏捷で技術に長けたふたりのアカデミー出身者がレギュラーポジションをつかんでいる。

「まだ2カ月くらいしか経っていませんけれども、ある時間帯ではやりたいことができていて、そこはポジティブに考えています。しかも若い選手に入れ替え始めましたので、そこもポジティブな要素です」(フィッカデンティ監督)


 狙うのは若い力を勢いにしての中位からの脱却か。3月4日にはこんなことを言っていた。

「たくさん走る、たくさん積極的にプレーを仕掛ける、そういった若い選手たちがエネルギーをチームにもたらしてくれることを望んでいます」

後藤勝

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWeb/メールマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」(http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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