「戦術」で変化した日本ラグビー 13−14シーズン総括
攻撃面でもリードした2冠のパナソニック
日本選手権決勝で東芝を破り、2冠を達成したパナソニック 【築田純】
2冠の要因は――。もちろん、伝統の守備を再強化したこともあるが、攻撃でも他チームの追随を許さなかった。昨年の11月上旬、宮崎合宿を敢行。オーストラリア代表のロビー・ディーンズ前監督と、かつてチームに在籍した現ハイランダーズBKコーチのトニー・ブラウンの2人が戦術に磨きをかけた(SH田中史朗が所属するハイランダーズはパナソニックと同様の戦術)。
前提として、現在の潮流は「リサイクルベース」だ。日本代表やパナソニックでは「リロード」とも呼ぶ。ボールを継続する中で、相手の組織ディフェンスに対し、ミスマッチやほころびを作ってトライを狙う。また、なるべくラックにかける人数は少なくし、素早くボールを出せれば攻撃側がより優位に立てる。
最先端の戦術に田中とバーンズの判断が加わる
ボールを持って突破するパナソニック・田中(中央)。正確な判断で攻撃をリードした 【築田純】
パナソニックは唯一、2011年ワールドカップ優勝のニュージーランド代表が採用していた「2ポッド」の変形版である「4ポッド」という最先端の戦術を用いていた。中盤はFWの前5人を中心にSHから2つの起点を作り、両サイドにはバックローとBKが分かれて立つ。4つユニットがある中で、FWを前に出すことも、デコイ(おとり)にしてBKラインに回すこともでき、しかもSH田中と司令塔ベリック・バーンズが判断し、自由に動いて相手ディフェンスを攻略する。
例えば、中盤ではSHから順目にFWが立ち、ダブルラインも形成しつつ、逆目にもアタックラインができている。日本選手権決勝の前半8分、左タッチライン際から中盤でFWが2回ボールをリサイクルし、ナンバー8がおとりとなり、一気に外に展開、トライ寸前まで迫った。30分も、その前のプレーで逆目を攻めていたことが功を奏し、FWが順目に縦を突いた後、相手のディフェンスがそろっていない順目にSOバーンズが走り込んでラストパス。トライを挙げたWTB山田章仁の強さと巧みさも光った。
キックの戦略が機能した東芝、サントリーは無冠
サントリーは、4シーズンぶりに無冠に終わった。代名詞のシェイプを貫いた。突如、逆サイドを突いたり、近場を攻めたりするなどの工夫も見えた。だが、2年前には、現在、日本代表を率いるエディー・ジョーンズが去り、昨シーズン、ヘッドコーチを務めた沢木敬介氏もU20日本代表の指揮官に就任してしまった影響は隠せなかった。