ターボエンジン、ERS導入などで大変革=2014シーズンのF1が開幕へ

田口浩次

4年連続王者レッドブルにトラブル続発!?

ウインターテストでトラブル続発だったレッドブル。不安が残る中、開幕を迎える 【Getty Images】

 さて、間もなく開幕だというのに、各チームからはいまだに完調状態で走行できたという話は聞かない。中でも4年連続王者レッドブルの問題は深刻で、通常のウインターテストでは、予選のシミュレーションやレースシミュレーションを行うのだが、レッドブルはいまだにそうしたシミュレーション走行にも至っていないからだ。ここ数年、マシントラブルによるリタイヤは本当に少なくなったF1だが、開幕戦のオーストラリアGP(14日〜16日)は、ヘタをすると完走するマシンの方が少ないのではないか? という声も聞こえてくる。そして、その不名誉チームの筆頭に挙がっているのがレッドブルなのである。

 レッドブルが抱える問題は簡単ではない。最初のトラブルは、ルノー製のパワーユニットだった。単純にユニットが動かないというもの。次にオーバーヒートによるトラブルが見つかり、連続走行ができないことが判明した。ターボエンジンの採用と、熱エネルギー回生という仕組みは、従来の自然吸気エンジンとは比較にならないほどの熱量を発生する。そのため、インタークーラーとラジエーターで空気を冷やしていくのだが、エアロダイナミクスを究極まで追求する天才エイドリアン・ニューウェイのデザインは、ターボエンジン時代の冷却には厳しすぎたようで、オーバーヒートが連発した。

バッテリーの蓄熱もトラブルの原因に

 そこに連動する形で、バッテリーにも問題があると言われている。モーターで160馬力以上ものパワーを供給するバッテリーだが、じつは温度管理が非常に難しい。モーターも熱を持つとパワーダウンする問題があるが、モーターの冷却は単純にモーターに当たる空気の量を増やして冷却すればいい。しかし、バッテリーの場合は、最適な性能を発揮させるためには、一定の温度に保たなければならない。しかし、電力を頻繁に出し入れする時は、マネジメントを最適化していないと、バッテリー自体に熱が発生する。よく携帯電話の充電中などに、携帯電話が熱くなった経験をした人もいるだろう。F1マシンが搭載するバッテリーも同じで、充電と放電時のマネジメントが最適化されていないと、バッテリー内部に蓄熱してしまう。そして、蓄熱してしまうと、想定している電力の充電・放電がうまく行えない。結果、さまざまなトラブルへとつながっていく。

 もうひとつ、バッテリーが抱える大きな問題は、完全放電をしてしまうと、いきなりバッテリー性能が落ちる特性があること。多少なりとも電力を残したまま次の充電を行わなければいけないのだが、ソフトウェアのトラブルなどで充電より放電の割合が増えて走行中に完全放電になってしまった場合は、もはやユニットごと交換しない限りバッテリー性能は元に戻らない。こうした数々のトラブルをたった3度のウインターテスト走行で解決しようというのは、レッドブルほどのトラブル続きは異例だとしても、全チームにとって、時間が足りないという状態であることは間違いない。

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