ターボエンジン、ERS導入などで大変革=2014シーズンのF1が開幕へ

田口浩次

14年シーズンのレギュレーション変更点

F1の2014シーズンがオーストラリアGP(14日〜16日)から開幕。レギュレーションの変更が多く今季はどんな展開に!? 【Getty Images】

 2014年F1シーズンがいよいよ開幕する。今年のF1シーズンは、じつにさまざまな話題に溢れていて、注目すべきポイントが多い。あらためて主要な変更をリストアップするだけで、いかに多くの変更があり、チームへの負担が大きいかが分かる。

<主な変更点>
1:1988年以来のターボエンジン復活(1.6リットルV6シングルターボとする)
2:『KERS』(運動エネルギー回生システム)に変わるエネルギー回生システムとして『ERS』を採用。トヨタのプリウスなどの市販ハイブリッド車と同じく、ブレーキング時の運動エネルギー回生に加えて、排気熱からエネルギーを回生する熱エネルギー回生も採用

3:回収するエネルギーのバッテリー容量を10倍に引き上げ、モーター出力を2倍(120kW/約161馬力)に変更。これにより、1周あたりのモーター使用時間は、従来の約6.5秒から約33秒にまで引き上げられる

4:使用燃料は100キロ(約140リットル)に制限(13年は150〜170キロ前後使用していた)

5:ギアボックスを7速から8速に変更し、ギアレシオ(歯車比)は固定化する(シーズン中に1度の変更を認める)

6:モノコック先端の高さを10センチ低くし、さらにノーズの先端位置と体積を規定した。この変更により、『アリクイノーズ』と呼ばれるノーズが増える結果に

7:フロントウイングの全幅を1800ミリから1650ミリに短縮

8:ドライバーの固定ナンバー制度導入。F1キャリアの間、2から99で好きな番号を選べる。同じ番号を選択した場合は、前年のランキング順位で優先を決める。チャンピオンは1を選択し、固定番号は欠番とする

9:シーズン最終戦をダブルポイントにする

10:ペナルティポイントシステムの導入(免許の違反点数制度のようなもの)

11:コスト削減のため、風洞施設とCFD(流体力学計算)使用時間に制限を加える

 以上はあくまでも主要に目立つものを挙げただけで、実際には細かい変更が多岐にわたって加えられている。

『KERS』から『ERS』導入に注目

 きっと、14年シーズンのニューマシンが登場した時、多くの人は、非常に特徴的なノーズ形状に注目したに違いない。実際、このデザインを支持する人はパドックの中にも皆無で、ファンからも「今年のマシンはカッコ悪い!」と辛辣(しんらつ)な評価が下されている。しかし、今年注目してほしいのはマシン形状ではない。88年以来の復活となるターボエンジンの導入と、それに組み合わせるハイブリッドシステム『ERS』だ。

『ERS』とは「Energy−Recovery System」の略称で、その名の通り、エネルギー回生システムのこと。トヨタのプリウスやホンダのフィット ハイブリッドなどに搭載するハイブリッドシステムと基本的な考え方は同じで、ブレーキング時の運動エネルギーを回生して電気を生み出してバッテリーに蓄電、走行時はバッテリーからモーターに電力供給して走行をサポートする。このエネルギー回生システムをF1ではこれまで『KERS』(Kinetic Energy−Recovery System)と呼んでいた。しかし、今年の名称はERS。なぜ「K」の文字が抜けたのかというと、従来の運動エネルギー回生だけではなく、排気ガスの熱エネルギーを回生することになり、2種類の回生システムをマシンに搭載するので、ERSと名称が変更されたのである。

 このERS技術を解説すると、まるで学術書のような複雑怪奇なものになるので省略するが、約160馬力ものモーターパワーを約33秒も使えるようになったことで、これまで他のマシンを抜く時に使う、ブーストボタンのように使っていたKERSとは使い方がまったく変わってしまった。ドライバーがERSボタンを押すことはなく、マシンのプログラムが適正な使い方を自動制御することになった。試しにドライバーにマニュアル操作をさせたところ、あまりにも忙しすぎて、まともに使いこなせなかったそうだ。

ターボエンジン採用によるサウンドにも変化あり

 そして、強力なモーターを搭載し、回生するエネルギー量が増えたことで、もうひとつ大きな変化が生まれた。それがV6ターボエンジンとの組み合わせによるF1サウンドだ。

 きっと、88年のホンダターボエンジンの音を聞いたことがある人は、かなりの少数派だろうし、もし当時は聞いた記憶があっても、その記憶はすでに長く続いた自然吸気エンジンサウンドに書き換えられてしまっているはずだ。
 ハッキリ言って、今年のF1サウンドは、昨年までとはまったくの別物になった。そしてモーターによるエネルギー回生が大きいので、減速時はまるで列車を思わせるほどのモーター音がする。それと、燃料制限が一気に30%以上厳しい100キロになったにも関わらず、これまでF1では長く見ることがなかった、減速時やピットアウトする時に、排気管内に溜まった生ガスが爆発する、派手なバックラッシュが発生している。
 フェラーリのエンジニアである浜島裕英氏も「きっとパドッククラブのように、ガレージの真上にいる観客は、ピットから出ていくマシンのバックラッシュ音にびっくりすると思いますよ」と言っている。バックラッシュはカメラマンにとってもうれしい誤算で、往年のF1マシンのような、排気管からの炎が見えている写真が撮影できるかもしれない。
 本当にこれまでに聞いたことがないF1サウンドなので、ぜひともエンジンサウンドに注目してもらいたい。

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