リナレスvs荒川が本場・ラスベガスで実現=3月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

33歳の努力家・河野が世界王座返り咲き狙う

昨年5月にリボリオ・ソリスに敗れて世界王座から陥落した河野。再び世界のベルトを腰に巻くことができるか!? 【Getty Images】

 26日にはWBA世界スーパーフライ級王座決定戦が行なわれ、元王者の河野公平(ワタナベ)がベルト奪還を目指す。一昨年の大みそか、3度目の挑戦を実らせた33歳の努力家は発表会見で「何が何でも勝って返り咲く」と“最後の挑戦”に賭ける決意を語った。対戦相手のデンカオセーン・カオウィチット(タイ)は坂田健史(協栄=引退)や亀田大毅(亀田)と世界王座を争うなど、日本でもおなじみの37歳。66戦62勝の大ベテランに、陣営は河野の持ち味であるスタミナを生かし、後半勝負を目論む。

 ひな祭りの3日には女子のトリプル世界戦が行なわれ、小関桃(青木)、宮尾綾香(大橋)、柴田直子(ワールドスポーツ)の3王者が防衛戦に臨む。本人の思いとは無関係に否が応でも話題を呼びそうなのが、勝利すれば具志堅用高氏の世界王座国内最多連続防衛記録13度に並ぶ小関。KOより大差の完封勝ちが理想というサウスポーは、男子と女子では歴史が違うと冷静なのだが。

 1日には村田諒太のデビュー戦で2回TKO負けを喫した柴田明雄(ワタナベ)が復帰する。日本3階級制覇を果たした日本ミドル級王者の中川大資(帝拳)とは再戦になり、柴田の東洋太平洋王座も賭けられる。一昨年6月には柴田が判定で競り勝ったが、発表会見で中川は「並々ならない闘志で調整している」と雪辱への強い気持ちを示した。「今まで以上に気持ちのこもった試合になる」という柴田は村田戦を機に本格的なフィジカル強化に取り組んでおり、「リングに上がったときに(見ている人を肉体の変化で)驚かせたい」とも言っていた。初戦同様、接戦になることが予想されるが、失意の底から這い上がらんとする柴田の心身両面に注目だ。

山中との統一戦狙う岩佐がOPBF初防衛戦

 3月は日比対決の東洋太平洋戦にも注目。25日は昨年12月、両国国技館で東洋太平洋バンタム王者・椎野大輝(三迫)を5回TKOに退け、一時の停滞ムードを振り払った岩佐亮佑(セレス)が初防衛戦に臨む。本人の希望で1位のリチャード・プミクピックを迎え撃つが、山中慎介(帝拳)と世界王座統一戦での再戦を望むサウスポーは初の世界挑戦に向け、内容でアピールしたい。24日はフェザー級王者の天笠尚(山上)が初防衛戦で来日2勝2KO1敗のダイナミックなサウスポーで、1位のビンビン・ルフィーノと対戦する。日本王座を4度防衛した身長179センチの痩身のパンチャーは苦手のサウスポーを撃破し、上への足掛かりにできるか。30日には高校時代に4冠の実績を持つ16戦全勝10KOの原隆二(大橋)がミニマム級王座決定戦に臨む。日本王座は3度防衛したが、2試合でダウンを喫するなど、あと一歩、突き抜け切れなかった。現在、4団体のいずれの世界ランキングにも名前を連ねており、地元・静岡のふじさんめっせ(富士市)できっかけを掴みたいところ。

 最後に中部のホープを紹介したい。昨年11月、高校3年生でプロ転向し、いきなり世界ランカーと対戦。初回に鮮やかにダウンを奪った末、見事な判定勝利を収めた18歳の田中恒成(畑中)が16日、名古屋国際会議場で今度はWBA世界ミニマム級15位のロネル・フェレラス(フィリピン)とプロ2戦目を戦う。昨年12月にデビューした井上尚弥(大橋)の弟・拓真(大橋)とは同学年で、高校時代は3勝2敗とライバル関係だった。1月には後楽園ホールで行なわれた日本ミニマム級王座決定戦を畑中清詞会長と視察。史上最短記録となる3戦目での日本王座奪取を狙っているのだろう。フェレラスは新王者の大平剛(花形)と同じサウスポーでもある。デビュー戦では新人離れしたハイテンポで完成度の高いボクシングに目を見張らされたが、次は世界ランカーのサウスポー相手にどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。

※原隆二、田中恒成以外の興行は、いずれも東京・後楽園ホールで開催。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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