リナレスvs荒川が本場・ラスベガスで実現=3月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

3月からにぎやかになる国内リング

昨年11月は急きょ世界戦が中止となるハプニングに見舞われたリナレスだが、代替試合できっちりKO勝利。今回、ラスベガスで技巧派の荒川と世界挑戦権を懸けて激突する。 【t.SAKUMA】

 年間最高試合に選出されたWBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ、王者・内山高志(ワタナベ)と金子大樹(横浜光)の大みそかの大熱戦で締め括られた2013年。国内で開催されたプロボクシングの興行数は232、試合数は1793だった。興行数は2007年に286と300を割り、試合数も2004年の2653をピークに減少傾向が続いてきたが、昨年は2012年の興行数223、試合数1762をわずかながら上回ったことになる。だが、年が明けて2014年1月の興行数は6で2月は4。この時期は例年、興行数は少ないが、ここ10年間の月別興行数で最低だった2010年1月の5を2月は下回った。

 とはいえ、2008年には日本ボクシングコミッション(JBC)が女子を認可、また昨今では海外遠征が増加傾向にあるなど、単純には比較できない面もある。2月22日、中国・マカオでのプロ3戦目に4回TKO勝ちした村田諒太(三迫)を含め、1月は3試合、2月には7試合と国内のジムに所属する選手が海外で試合を行なっており、2月9日には韓国・春川で19歳の山田真子(博多協栄)がWBO女子世界ミニフライ級王座を奪取した。3月に入れば、これまた例年どおり、いよいよ国内のリングがにぎやかになってくる。興行数は20、そのうちタイトルマッチは世界が4(女子は3)、東洋太平洋が7(女子は3)、日本が4、東洋太平洋と日本のダブルが1と一気に増加。海外でも国内選手絡みの試合が複数予定されているが、すべてを取り上げることは残念ながら難しいので、数ある中から注目試合をピックアップして紹介したい。

メイドインジャパン対決が世界を驚かせるか!?

 まず、タイトルマッチを差し置いて、真っ先に取り上げなければならないのが、8日(日本時間9日午前)に米国・ラスベガスで挙行される豪華興行に組み込まれたWBC世界ライト級挑戦者決定戦、ホルヘ・リナレス(帝拳)と荒川仁人(八王子中屋)の一戦だろう。フェザー級、スーパーフェザー級に続いて世界3階級制覇を狙う28歳のリナレスは、すでにラスベガスのリングに2度、上がったことがある。母国のベネズエラで156戦151勝のアマチュアキャリアを積んだ後に来日し、17歳のときに大阪でプロデビュー。以来、日本のリングをベースに経験と力をたくわえて世界へ飛翔した、言わばメイドインジャパンの俊才だ。

 対する荒川は昨年7月、アメリカ・テキサス州サンアントニオで行なわれたWBC世界ライト級暫定王座決定戦で大差判定負けながら、驚異的な粘り腰で壮絶な打撃戦に持ち込んだオマール・フィゲロア(米国)戦が評価されて、この大一番を手繰り寄せた。全日本新人王、日本王者、東洋太平洋王者と着実にステップを上がってきた32歳は本来、丹念に試合を組み立てるテクニカルなサウスポー。しかし、圧倒的なスピードとセンスを誇る元2階級制覇王者に技術戦を挑むのは正直、厳しい。距離をつぶし、フィゲロア戦のように展開をラフにかき乱す中で活路を見出したい。両者にとって挑戦権獲得と本場でさらに名を売るビッグチャンス。好漢・荒川はジムの後輩の応援に来ていた後楽園ホールで「大和魂を見せてきますよ!」と言って、にこやかに笑った。互いに日本のリングに育まれた選手同士、心・技・体の“心”の比重が高くなるような戦いになだれ込めば、メイドインジャパンが世界を驚かせることになる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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