惨敗の日本勢、強化体制の幹作りを=寺尾悟のショートトラック総括
バンクーバー後の方向性は間違っていなかったが……
昨季世界選手権3位の日本女子。しかし今大会では決勝に進めず。右から、伊藤、酒井、桜井、清水 【写真は共同】
今回も1カ月の半分ぐらいは合宿をしてきたので、強化の時間はあったと思います。ただ、内容や質、量と言った部分で、疑問符はありますね。この結果なので、良いとはなかなか言い切れないです。
――具体的にどんな部分で練習の質に差があるのでしょうか?
今は僕らの時代より練習のタイムやラップは、総合的に上回っています。ただ練習の絶対量としては、僕らの時代より全然少ないと思うんです。けがとのぎりぎりの戦いでもあるのですが、その中でどこまでやれるのか、どこまで追い込んだ方がいいのかというのはすごい難しい部分ですね。
今は練習量に関してある程度個人に任せている部分があるのですが、そこをもっとチームとして一貫して、もっと強い刺激を与えたりした方が良いか、新しい切り口から増やすのか、考えないといけないですね。
ただ前のバンクーバーが終わった2シーズン後には酒井がW杯で総合優勝したり、世界選手権のリレーでメダルを取ったり、一定の成績はバンクーバー前に比べて良かった部分だと思います。
――課題はクリアーされていて、方向性は間違ってないと?
バンクーバー後、最初の2年で日本勢の結果が出てきていたんで、多少ぶれずに迷わず、進んでいってもいいかなと思います。一概に、何かが足りなかった、何かがダメだったという結果ばかりでもなかったです。
――今回の五輪はピークが合わなかった?
確かに、他の国はこの1年間が勝負だったんでしょうね。昨年までは戦える部分があったので。結局、五輪で結果が出なかったということが評価になりますから、少し考えないといけないと思います。
平昌五輪の前に、まず世界選手権で結果を
どちらかというと、トップは少しスローダウンしていると思います。ただ、今は中間に位置していたヨーロッパ勢がグーンと力を付けています。そこに日本は飲まれてしまっている状態です。だから難しい部分があると思います。
今回の五輪はヴィクトル・アン(ロシア)が個人で2個、団体で1個の金メダルを取っていますが、W杯や世界選手権ではメダルが偏ることはありません。
昔のように韓国ばっかり、カナダばっかり、中国ばっかりということはなく、だいぶトップと中間層との差が詰まっています。
――その中で、日本は食らいついていくしかないと。
そうですね。追いつく側の人間は、大体そこまでいけるというイメージができるので。僕らはそこに追いつくだけを考えればいいので、だから日本はまだまだやれる可能性があると思います。
技術のベースはどの国も取り入れていると思います。だから夏のシーズンや、W杯期間の2、3週間や、1カ月をどのように過ごすかは大きいと思います。
――次回の平昌五輪へ向けてどんな強化をしていくべきでしょうか?
具体的な話は、考えないといけません。今回は結果が出なかったので、この延長線上に答えはないと思います。少し違う切り口で進めてみたいです。
いずれにしてもぶれないことが大事だと思います。いろいろ気になる部分はあると思いますが、やっぱりある程度の幹を作ったら、それを信じてやっていかないとダメかなと思います。
次の平昌五輪は2020年東京五輪の前の大会となるので、そこで良い流れを作って、東京での夏季五輪があって、その次の冬につなぐ。この3大会は非常に大事かなと思います。
ただ簡単に4年で強化が間に合うと思わないので、すぐに動かないといけないかなと思います。
――まずは次の世界選手権が目下の指標になるかと?
僕も長野五輪の際、周りに期待されて結果が出ず、その1カ月あとの世界選手権でメダルを取ったりしました。やっぱり、五輪でダメだったから全部終わりとか、これがすべてではありません。ショートトラックで言うと、最高峰の戦いは世界選手権なので、当然、そういうところで、しっかり結果を出すことに切り替えることが大事かなと思います。
<了>
(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)