真央、記憶に残る4分間=澤田亜紀のフィギュア女子FS解説
ソトニコワ、勝つプログラムで金メダル
躍動感のある演技を見せたソトニコワ(中央) 【写真:AP/アフロ】
スピンの回転のポイント、点が動かずに回れていて、フライングキャメルスピンでもプラスの評価をもらえています。すごく練習しているんだろうなと思いました。
これまでリプニツカヤ選手の方が、柔軟性の高さもあって注目が集まっていましたが、ソトニコワ選手はジャンプもスピンもステップもすべてがそろって、最後までスピードが落ちない演技でした。まるで電池かモーターでも付いているかのように(笑)。体力をつける練習もしたのかもしれませんね。
体力をつける練習というと、私はプログラムを通しで練習した後にリンクを2周滑るというのをやっていました。それから、今大会でも男子の羽生結弦選手がやっていましたが、マスクをつけて少し息がしにくい状況をつくり、酸素が少ない高地練習と同じ環境をつくるようなこともしましたね。
得点は、3つの連続ジャンプのセカンド(2本目)に3回転ジャンプを入れるなど、もともとのジャンプの基礎点が高いプログラムを組んでいて、さらに加点ももらっています。基礎点の時点で得点が高いので、その設定で加点がもらえれば得点が高くなるのは妥当だと思います。演技構成点もみんな同じくらいの得点なので、技術点の部分でうまく作戦を立てられたソトニコワ選手が勝ったのだと思います。
ヨナ、集大成の演技 勝ち負けはこだわらず?
演技後、ホッとしたような仕草を見せたキム・ヨナ 【写真:ロイター/アフロ】
一方でソトニコワ選手はセカンドに3回転の入ったジャンプを2つ跳んでいます。3回転ジャンプを跳んだ回数が多い分、得点が上回りました。ソトニコワ選手のプログラムは勝ちにいっていますし、まだ17歳と若いのもあって、挑戦の意味があったと思います。
ただ、キム・ヨナ選手は競技をしていない時期もあったのに、よくここまで戻ってきたなと思います。キス&クライでは喜ぶとか悔しがるとかではなくて、開放されたような表情をしていました。勝ち負けにこだわっていなかったのではないかと思います。ケガは大丈夫だと思いますが、彼女は彼女なりの集大成の演技を見せたのではないでしょうか。
FSのプログラム曲『Adios Nonino(アディオス・ノニーノ)』はタンゴの曲で表情も出ていました。プログラムとしても面白かったです。採点には「0(ゼロ)」がありません。ただきれいはきれいだけど、勢いはソトニコワ選手の方があふれていたかなと思います。
コストナー、金メダル級の4分間
世界ランキング1位のコストナー、3度目の五輪で初めてのメダルを手にした 【写真:AP/アフロ】
FS曲の「ボレロ」は、ずっと同じスローペースで単調な曲調なんです。曲自体に目立ったメリハリはないのですが、コストナー選手が踊ると曲の強弱ができてメリハリもできるような、FSの4分間を長く感じさせない演技でした。可愛い振り付けがあったり、大きななかで細かい動きを入れたり、表現ができていました。出来栄えでもう少し点をもらえてもいいのではと思う演技でした。
演技構成点の10点満点がSPよりも増えています(SP2個、FS7個)。特に「Interpretation」という曲の解釈、“翻訳”の部分で4つ満点がついていますね。体で音楽を表現できていたので、ここの評価が高いのではないかと思います。演技が終わった後は、金メダルはコストナー選手かなとも思える演技でした。
でもその後に滑ったソトニコワ選手には勢いがありましたね。そしてメダルの色を争うという意味では、すべての連続ジャンプに3回転をつけるのが大事だったと思います。
今回は10代の選手が勢いを、20代の選手は見せ場のある演技をしていたと思います。みんなが良いところを出せたFSだったのではないでしょうか。
<了>