シンデレラガール小野塚の強みは、高さを生む技術=畑中みゆきの女子フリースタイルスキー解説

構成:スポーツナビ

新種目のフリースタイルスキー女子ハーフパイプで銅メダルを獲得した小野塚彩那 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ソチ冬季五輪の新種目スキーフリースタイル女子ハーフパイプは20日(現地時間)に当地のロザ・フトル・エクストリーム・パークで決勝を行い、日本の小野塚彩那(石打丸山クラブ)が83.20点で3位となり銅メダルを獲得した。12人が出場する決勝に予選4位で進んだ小野塚は、決勝1回目の滑走で79.00点の3位につけた。2回目は各選手に転倒が相次ぐ展開となったが、小野塚は1回目と同じ技の構成ながら完成度を上げて得点を伸ばした。

 勝因となった小野塚の持ち味とは、何か。スポーツナビでは、女子モーグル日本代表として2002年ソルトレークシティー五輪、06年トリノ五輪に出場した畑中みゆきさんに解説を伺った。

基礎技術の高さがスムーズさ、高さを生んだ

 小野塚選手の持ち味は、何と言ってもスキー板を走らせる技術の高さにあります。基礎技術が高いからこそ、高さのあるエアを繰り出すことができます。空中でスキーをつかむグラブ技は2回しか出していませんが、圧倒的な高さがありました。また、決勝2回目のランは、技をかけるにあたって、スピンのローテーションが非常にスムーズだったのが良かったと思います。エアもターンもクリーンという言葉がピッタリとくる出来栄えでした。確かに回転技だけで言えば、より難度の高い回転技に挑戦していた選手がほかにいましたが、小野塚選手は技の出来栄えでしっかりとポイントを取ることができていました。

 彼女の基礎技術の高さの背景には、海外にはない日本独自の「基礎スキー」と呼ばれる競技があります。規定された演目の正確性を競うもので、彼女も基礎スキー経験者で、国内の大会を経験しているはずです。その経験が、滑り方を「ジャッジに見せる」巧みさにつながっている部分もあると思います。

転倒続出の中で見せたメンタルの強さ

 彼女は世界選手権(昨年3位)やワールドカップでも好成績を出していますから、メダルは意識して狙っていたと思います。世界ランクも上位に入り、成績が自信につながっていったように感じました。ただ、それでも大舞台で本領を発揮するのは難しいことですから、メダル獲得は彼女のメンタルの強さによるところも大きかったと思います。ハーフパイプの雪面が硬いようで、他選手が転倒するアクシデントが目につきました。当然、滑走順を待っている選手たちにとっては、場の雰囲気が悪くなるものです。そんな中でも悪い流れにのまれることなく「私はこの技で臨む」という揺るがない心の強さを感じさせてくれましたし、1回目を3位で終えて私は五輪の舞台でもやれるんだという気持ちの余裕を持って2回目に臨んでいたように見えました。もともと、彼女は普段の会話の中でも相手をリスペクトする気持ちや、芯の強さを感じさせるところがあります。今大会に向けた気持ちの強さが、難しい状況を克服する一助になったのではないでしょうか。

 フリースタイルのハーフパイプは五輪の新種目ですが、こうしたニュースポーツでメダルを獲得したということは、日本のスキー界にとって非常に意味のあることだと思います。アルペンスキーから転向して3年目で五輪のメダルを獲得した彼女は、まさにシンデレラガールという感じがします。

<了>

畑中みゆき/Miyuki Hatanaka

1975年12月18日、宮城県生まれ。フリースタイルスキー全日本選手権女子モーグルで3度優勝。日本代表として2002年ソルトレークシティー五輪、06年トリノ五輪に出場した。その後、スキーハーフパイプ種目に転向し、09年にはワールドカップ自己最高位となる2位に。現在はモーグル、ハーフパイプの指導を続けながら、東日本大震災復興支援の活動を積極的に行っている。
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