団体5位は総合力の差、でも楽しさ伝わったはず=荻原次晴がノルディック複合を解説
複合団体で5位となり、個人ラージヒルで負傷した加藤大平選手(中央)を囲む日本の(左から)湊祐介選手、永井秀昭選手、(1人おいて)渡部暁斗選手、渡部善斗選手=20日、ソチ 【共同】
この団体戦の結果とともに、個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得した渡部暁らノルディック複合陣の活躍について、1998年長野五輪に日本代表として出場した荻原次晴さんに話を聞いた。
4人そろった総合力で上位勢に及ばなかった
ジャンプで首位に立つぐらいではないと後半で勝負できないですね。ラージヒル個人でけがをした加藤太平選手の欠場の影響もあるとは思いますが、結果のデータから、いろいろ“タラレバ”で考えても、仮に加藤が出て良いジャンプをしても、メダル争いには絡めなかったと思います。それくらいノルウェー、ドイツ、オーストリアの総合力が勝っていました。
私にも想定外だったのですが、日本チームは暁斗をジャンプの1番手で起用しました。通常はジャンプの力に劣る選手から1番手に起用することが多いので、助走路を高めに設定するんですね。日本としては、そこで暁斗を起用して、なるべくジャンプでアドバンテージをつくる作戦だったと思います。ただ、ノルウェー、ドイツなどが総合力で上回っていました。具体的にはノルウェーのマグヌス・モーアン選手はクロスカントリーが強い選手なのですが、ソチに来てからはジャンプの調子もよく、団体でもいいジャンプをしていました。そういった走れる選手が好ジャンプを見せていましたね。ドイツにしてもみんな良いジャンプを飛んでいました。暁斗と同レベルの選手が4人そろっているという感じですね。
成果を出せた大会、さらにジャンプの強化を
暁斗について言えば、昨シーズンはワールドカップ(W杯)で総合3位になりながら、優勝はありませんでした。それはジャンプが本来の調子ではなかったからです。それを去年の春から秋にかけて、ジャンプ助走路での体重の掛け方を変えたことで復調して、今回の銀メダル獲得につながりました。
ただチームとして見れば、できれば暁斗のような選手がもう一人、二人と出てきてほしいですね。今後も彼一人に頼ったチーム編成では厳しいと思いますので、いい選手が出てきているからこそ、それぞれがよりモチベーションを高く取り組んでいってほしいと思います。
選手の強化については、ジャンプをより磨くというところに尽きます。さまざまなルール変更を経て、前半のジャンプで差がつきにくい競技にはなっていますが、それでも前半のジャンプでリードしておかないと、上位に食い込めないですね。今回の団体戦を見ても、皆さん感じたと思いますが、前半のジャンプでしっかり上位に入る力をつけないといけません。クロスカントリーについても細かい課題はそれぞれあると思うのですが、経験を重ねるにつれて、自然と強くなっていく面もありますので、やはり課題としては日本選手全員が暁斗や加藤と同じくらいジャンプを飛べるような強化が必要ですね。
今大会をきっかけに楽しさが伝わったと思います
そして、久しぶりに複合をたくさんの人に応援していただいたということが、うれしかったです。複合が輝いていた時代はもう20年前ですから、若い人たちはほとんど知らないと思います。今大会をきっかけに、かつてそういう強い時代があったんだということを知ってもらえたことも本当にうれしかったです。
当時は荻原健司を中心に複合陣はみんな明るいとか、よくしゃべると思っていただいていたと思いますが、いまの複合陣もお茶の間で愛される存在になっていってほしいですね。アスリートとしてだけではなく、社会の中の一人として、いろんなものを見たり考えていって、成長してもらいたいと思っています。
<了>
荻原次晴/Tsugiharu Ogiwara
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