女子フィギュア、金メダルへの勝負技は?=澤田亜紀の女子フィギュア展望・後編

構成:スポーツナビ

女子フィギュア、勝負のポイントは!? 【坂本清】

 ソチ五輪の女子フィギュアスケートは現地時間19日(日本時間20日0時〜)にショートプログラム、20日(同21日0時〜)フリースケーティングが行われる。日本からは浅田真央(中京大)、鈴木明子(邦和スポーツランド)、村上佳菜子(中京大)の3選手が出場し表彰台を狙う。

 澤田亜紀さんによる女子フィギュア展望・後編は、今大会の“勝負技”となるポイントについて。男子が4回転ジャンプなら、女子で勝つために大事な技は? 

連続ジャンプの2本目に注目!

 女子の勝負はやはり、3回転を何本付けられるか。3回転−3回転が跳べるかどうかですね。フィギュアはより多く得点を取れた人が勝つので、連続ジャンプの後ろになるべく3回転ジャンプを付けられる選手が勝つなという印象があります。
 得点の高さで言えばもちろん4回転が高いですが、公式戦で4回転を成功させた女子選手は安藤美姫さんしかいませんから。

 ルールでは、女子のフリーは7回までジャンプを入れられます。7回のうち、連続ジャンプは3回までで、そのうち1回は3連続にできるため、全部で11個のジャンプを入れられます。
 それでも3回転以上の同じジャンプを使える数には制限がある(2種類を2度まで)ので、3回転−3回転が良いのはもちろんですが、2回転−3回転なども含めて何個できるかです。
 ただ連続ジャンプの2つ目に3回転をつけるのは難しいんです。1本目の着氷後の勢いが大事で、勢いがないまま跳び上がってしまうと、転んでしまったり、力でなんとか上がるような形になってしまうので。

 村上選手は3回転−3回転は得意ですね。さらにもう1本、3回転−3回転を跳べたら大きいです。ロシアの15歳、ユリア・リプニツカヤ選手は前半に3回転を含めた3連続ジャンプを入れています。ここからさらに3回転ルッツからのコンビネーションだったり、ダブルアクセル−3回転トゥループだったりで、確実に2本の連続ジャンプを入れて決めれば、さらに大きな点数になります。リプニツカヤ選手の場合は前半にミスをしても、得点が1.1倍になる後半にジャンプを5本入れているので、(後半に得点の)リカバリーができるのも強みですね。

 今のトップ選手は、みんなが跳べるジャンプが同じくらいになっているので、体力も頭も使って、どのジャンプを2回跳んで、ジャンプ数の制限に掛からず得点を稼げるかどうかが大事です。

ジャンプの“入り方”も評価に

 他に加点を取れる項目としては、十分な高さと幅のあるジャンプをすることや、ジャンプの入り方ですね。男子の羽生(結弦)選手の、後ろ向きの状態から振り向いて跳ぶトリプルアクセルも難しいので加点がもらえます。浅田選手も何年か前に、トリプルアクセルの前に小刻みな動きを入れていましたね。ジャンプの前に動きを入れると、ジャンプ動作に入るためのバランスが変わるので難しく、評価されます。
 ジャンプは、入り、高さ、軸の細さ、巻き足になっていないか、回転が細くて速いか、着氷時に氷をガリガリとかかずにきれいに流れていくかも評価の対象です。

 今の採点方法だと、ジャンプ、スピン、ステップと、「これをやったら点が出ますよ」という基準があるので、要素をきっちりとやった人が勝ちます。フィギュアの得点は、技術点と表現面などを評価する演技構成点に分かれているのですが、技術面の点が高いと演技構成点の方も上がりやすいところはあります。やっぱり3回転−3回転を跳ぶには技術がないと無理ですから、それができるということは、全体にも影響があると思います。

 出来栄え点(GOE)についてですが、浅田選手はジャンプを跳ぶまでの待ち時間が短くなりました。そういうところも評価されるポイントです。本当は跳ぶまでの待ち時間は少ない方がいいんです。浅田選手は、ステップからすぐに跳ぶジャンプもできますし、ときどき着氷がきれいに流れないこともあるので、それがなくなればもっと良くなって、得点につながるかもしれません。ジャンプの高さはありますから。グランプリシリーズのときがそうだったんですが、不安なジャンプはスピードを落としがちになります。不安なく跳んで、着氷も自信を持っていけるといいなと思います。

 スピンやステップでは、浅田選手は音がしないスケーティングができて、氷をガサガサとかいたりしません。こういうところは評価されます。それにエッジワークには調子の上げ下げがないので、やればやるほど上手くなるし、やらなければ下手になる。そういう要素なので、得点を支えるポイントにもなりますね。
 スピンは結構、演技しながら微調整ができるんです。キャメルスピンの入りにミスをしても、背中をそったり、手で踏ん張ったりしれば調整ができます。

 それぞれの要素をきっちりやって、3回転をなるべく跳ぶ。これが女子の勝負のポイントだと思います。

<了>

澤田亜紀/Aki Sawada

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では優勝1回を含め、6度表彰台に立った。シニアでは2004年全日本選手権で、安藤美姫、浅田真央、村主章枝に次ぐ4位に入り、07年四大陸選手権でも4位の成績を残した。5つの3回転ジャンプを跳ぶなど力強いジャンプが持ち味。トレードマークとも言える、氷上での明るい笑顔も人気を呼んだ。11年に現役の第一線を退き、現在は関大を拠点にコーチとして活動している。
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