女子メダル争いは日本vs.ロシア! ヨナは未知数=澤田亜紀の女子フィギュア展望・前編

構成:スポーツナビ

鈴木明子、冒頭の大技に注目

団体戦ではフリーに出場した鈴木 【Getty Images】

 鈴木選手は冒頭の3回転からの連続ジャンプ(SPは3回転−3回転、FSは3回転からの3連続。全日本時点)が決まれば波に乗るのではないでしょうか。FSでは演技の最初に連続で大技を入れているので(3回転フリップからの3連続と、ダブルアクセル−3回転トゥループ)、2つ決まればさらに波に乗ると思います。
 今季は徐々に良くなっていましたが、たまにジャンプのタイミングがずれたり、ルッツが1回転になったりすることもあったので、焦らないできちんと決めていくことがポイントだと思います。
 鈴木選手は基礎がしっかりしているので、各要素でバリエーションを効かせられます。スピンの軸も良くて、ブレもなく同じところで回り続けられる。ジャンプにも勢いがあって、幅、高さがあります。回転不足もそんなにない。ルッツにエッジエラー(エッジのミス)がつくことがあるので、これが成功したら大きいです。

 それから鈴木選手はとにかく目力がすごいです! 採点競技なので印象に残った方が点が出やすくなります。ジャッジだけでなくお客さんも巻き込める。お客さんの雰囲気も演技に影響するんです。

村上は最初の「3回転−3回転」が決まるか

1月の四大陸選手権で優勝した村上。調子は上々だ 【坂本清】

 村上選手は最初の3回転−3回転のトゥループ、これが決まるかどうかです。それからダブルアクセルの成功がポイントです。昨シーズンはダブルアクセルでミスをしていました。3回転−3回転など他の大技に力を入れ過ぎて、跳べるだろうと思っていたダブルアクセルがシングルになってしまったり。プレッシャーを掛け過ぎて、力んだりすることがありました。(3回転を予定している)サルコウは大丈夫だと思います。

 村上選手はSPもFSもしっとりとした曲を使っています。スイッチが入ったときの村上選手は表情もできていて、手の使い方が私は好きです。ステップは上体を大きく使えていると、出来栄え点に出てきます。正しいエッジに乗って、脇腹を折るような、上体が起きていない姿勢でのステップの方が加点はもらいやすいです。
 ただステップは全員がミスなくやってきます。その上で加点を取りにいけたら、本当に村上選手は強くなる。ジャンプは、スピードも幅も高さもあって、着氷がきれいなので、高さがもっと出ると良いと思います。

 全日本では、SPのプログラム曲を2季前の『バイオリン・ミューズ』に戻しましたが、それも良かったですね。ジャンプのタイミングというのは、曲のリズムで跳んではいけないんですが、不安な時は聞こえてくる音楽のリズムに合わせて跳んでしまう。村上選手の場合は、戻した曲に自分のタイミングが合っていたんだと思います。
 今季前半はずっと調子が悪くて、(五輪代表権を懸けた)全日本でピントが合わせられた(結果は2位)。さらに1月末の四大陸で初優勝して、良いイメージを持って五輪に臨めるのではないでしょうか。

ヨナ、久々の大舞台

前回女王のキム・ヨナ。トップ選手との試合は久々となるが―― 【写真は共同】

 キム・ヨナ選手は3回転−3回転がきれいな選手です。私も3−3を入れていたときがありますが、同じ大会に出たときに「かなわないな」と思いました。最初の1本目が流れがあって、続く2本目のジャンプも高さがある。ただキム・ヨナ選手はたまにポロっとミスをするところがあります。そこがポイントになるかなと思います。今季は小さい大会で淡々とやってきたところがありますが、トップの大会だと勝ちたい気持ちが出てきてしまうと思うんです。それがどう演技に出るかですね。滑り慣れているプログラムでも、ピリっとした大会の雰囲気でどうなるか。
 キム・ヨナ選手はすでに4年前に仕上がってしまっていますが、周りの選手はその状態を追い抜かすような勢いで伸びてきています。公式練習などでその勢いを肌で感じると思うので、その後、大会の雰囲気も含めてどのような演技になるのか楽しみです。

<後編へ続く>

澤田亜紀/Aki Sawada

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では優勝1回を含め、6度表彰台に立った。シニアでは2004年全日本選手権で、安藤美姫、浅田真央、村主章枝に次ぐ4位に入り、07年四大陸選手権でも4位の成績を残した。5つの3回転ジャンプを跳ぶなど力強いジャンプが持ち味。トレードマークとも言える、氷上での明るい笑顔も人気を呼んだ。11年に現役の第一線を退き、現在は関大を拠点にコーチとして活動している。

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