2度同点も…バタついてしまった守備=アイスホッケー元女子代表監督が解説

構成:スポーツナビ

開催国ロシアと競り合った日本。意気込みは十分出ていたが……。写真はロシア選手と競り合う竹内愛奈(右) 【写真:ロイター/アフロ】

 ソチ冬季五輪のアイスホッケー女子日本代表(愛称スマイルジャパン)は16日(現地時間)、順位決定予備戦で開催国ロシアと対戦し、3−6で敗れた。
 第1ピリオドに先制を許したものの、第2ピリオドに山根朋恵、床亜矢可のゴールで同点に追いついた日本。しかし再び失点を喫し、数的不利の状況でもゴールを奪われるなど、競り合いながらも勝ち越すことができなかった。日本は現地18日の7−8位決定戦にまわり、ドイツと対戦する。

 2度同点に追い付くも、今大会最多の6失点を許してしまったこの試合。五輪での白星を目指して、見直すべきポイントはどこか。元女子日本代表監督で、女子チームの強豪SEIBUプリンセスラビッツを率いる八反田孝行監督に聞いた。

意気込みがかえって……

 選手たちの意気込みは十分に感じられる試合でした。アタッキングゾーンから速く、しつこい攻撃ができたことは良かったが、守りが雑になってしまいましたね。守ってもパックを外に出せなかったり、マークミスをしたり、GKの藤本那菜もこれまでに比べるとあまり良くなかった。その辺で守備の安定感に欠けてしまいました。この試合に対して、勝ちたい気持ちが前のめりになり過ぎたのかもしれません。ディフェンスゾーンでのプレーがバタバタしてしまいました。

 立ち上がりは今日もまた押し込まれてはいましたが、それでもチャンスらしいチャンスはつくらせず、我慢していました。中盤まで相手ペースでしたが、中盤以降は盛り返して、日本もアタッキングゾーンでチャンスをつくりました。しかしながら、ディフェンスゾーンでのブレイクアウトのミスからミドルシュートで失点してしまうなど、攻撃と守備がちぐはくでした。得点を取って、これからというところで。とにかくゲーム運びが何かちぐはぐでした。

 ただ疲れというのは見えず、足も動いていたし、気持ちも入っていましたが、ロシアの勢いに対して押されてしまったというか。守備面は、前回の対戦(予選第2戦)は落ち着いてプレーできていましたが、今日は確実性のあるプレーができず、この試合への意気込みが、かえってプレーの繊細さを欠いてしまったのかもしれません。相手に対してのやる気、意気込みと慎重さが悪い方にいってしまった。

機能していた平野からの攻撃

 攻撃面は、ゴールへの気持ちがすごく出ていましたが、ラッキーもありましたね。2点目の床のゴールは良い角度でバウンドして入りましたし、3点目も良いシュートではありましたが、(展開としては)苦し紛れで打って入ったゴールでした。攻撃では結構、相手ゾーンでプレーしたのですが、ゴール近く、GKの近くまで入っていかなかった。その中でも、平野(由佳)はすごく良かったと思いますよ。久保(英恵)や大沢(ちほ)と絡んでチャンスをつくっていて、そこのところは機能していました。
 ただ、勝つには、久保のセットがもっと点を取らないと勝てないですね。“たられば”になってしまいますが、それがあればもっと違った展開に持っていけたと思います。打ち合いになると日本は分が悪いです。

 相手のロシアもミスをしていて、流れがロシアにいきかけたときに、第2ピリオドで日本は得点を取りました。そこで一気にいければ良かったのですが。

「心は熱く、頭は冷静に」 守備の見つめ直しを

 内容的にはディフェンスゾーンでの“DF同士、DFとFWの連携”を修正しないといけないと思います。次の試合へ向けては、守りを見つめ直して、1対1に負けない、マークを見直すことが大事だと思います。今日の試合でも、マークがうまくいかずに、一度防いだシュートのリバウンドをたたかれてゴールされたシーン(第3ピリオドの6点目)がありましたから。

 最後のドイツ戦(7−8位決定戦)に勝ってこれからにつながる試合をしてもらえればと思います。もう一度自分たちの特長を見つめ直して、「心は熱く、頭は冷静に」。日本らしい速さ、粘り強さを発揮して活路を見いだしてほしいと思います。

<了>

八反田孝行

SEIBUプリンセスラビッツ(旧国土計画・コクドレディース)監督。現役引退後、同クラブのコーチ、監督を歴任し、全日本選手権優勝5回、準優勝10回に導く。2012年には第1回女子日本アイスホッケーリーグ初代王者に輝いた。13年は連覇を達成。日本代表では92年からコーチを務め、98年長野五輪を経験。99年に監督に就任すると、アジア大会、世界選手権などの国際大会でチームを率いた。02年ソルトレークシティー五輪出場を懸けた予選で敗退し、代表監督の座から退いた。
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